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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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現役ライターのアンテナに引っかかった本、雑誌、DVD、映画、音楽etc.の紹介や、偏愛する作家、ミュージシャンなどの評も。
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私も悼んで欲しい~~悼む人~~
やっとPCの前に落ち着いて座ることが出来たので、いの一番に書きたかったこの本の紹介を。
天童荒太さんの新作です。
というより、直木賞を既に受賞された作品なので、とーっくに話題になった本ですが。

天童さんの作品は、ほとんど読んでいます。
(といっても、寡作な方なので、作品数自体そう多くはありません)
名前の通りと言うべきか、「荒ぶる魂」が感じさせられる作品が多くて、その筆力に驚嘆させられ、次々とページを繰りながら、心の中に流れ込んでくるのは、ある種の悲鳴や怒りで、読む側の心の中に沸き上がるのも、恐怖や畏怖、悲憤だったりして、正直好きなのに、怖いといった作家さんでした。
少なくとも私はそう感じていて、読んでしまうんだけど、また辛くなる……というジレンマに襲われつつ手に取っていたのでした。(手に取らざるを得ないのは、本読みの悲しい性なのか、天童さんの筆力なのか……)

でも、今回のこの「悼む人」は違う!
読み終えた後の、この静謐さと厳かさは一体なんなのでしょう。
心にしみいる作品です。つくづくと思ってしまいました。
天童荒太恐るべし!

物語は、とある青年を目撃した人の話から始まります。
自分の親友が殺された場所で、何かの仕草をしていた青年がいたと。
それこそが主人公の「悼む人」でした。
彼は、人が死んだ場所へ足を運び、その死を悼みます。死者がどんな人であろうと、どんな死に様をしようと全く変わりなく。
そう、殺人事件の被害者であろうと、加害者であろうと。
誰に頼まれたのでもなく、なんの宗教に属しているのでもない彼は、自分の貯金を食いつぶしながら、全国通津うらうらを旅し、人の死を悼んでいるのです。
公園で野宿し、粗末なものを食べ、周囲から偏見の目で見られて時には警察に保護されたりする、そんな過酷な旅は、ただ死者を悼むためだけのものでした。
ふとしたことから彼の行動を知ったエログロ専門と呼ばれる雑誌記者は、彼と出会い、その行動を馬鹿馬鹿しいと断じながら、彼のことが気になってたまりません。
その記者だけでなく、まるで惹きつけられるように、自ら夫を殺し刑務所から出てきたばかりの女も彼を追います。
彼の行動に、「死者を悼む」以外の理由を見つけたくて。
彼には故郷に家族がいます。
しかし、人の死を痛み続けている彼の家族にも死の影が差してきて……

人の死を題材にしているのだから、当然の事ながら随所に残酷な事件が記されたり、なんとも共感できない人物が登場します。
それでも、かつての作品のように、心をこじ開けられて、考えなければならないけれど目を背けたい現実を流し込まれる辛さは全く感じません。
ただ、ひたすら願うのです。
もしも自分が死んだら、私も彼に「悼んで」ほしいと。
もしも自分の愛する人が死んでしまったら、彼と共にその死を「悼みたい」と。

この人は誰にどんな風に愛されていたのか、愛していたのか、そしてどんな風に感謝されていたのか。
彼が死者を悼む時に、周囲の人に尋ねるのはこれだけです。
そして、その言葉を胸に入れた時、凶悪な殺人犯でも、生まれたばかりの赤ん坊でも、誰かに愛され、誰かを愛し、誰かに感謝されたことがあるのを知るのです。

つまるところ、人に生きてきた価値や意味があるとすれば、それだけなのかもしれないと思います。
偉業をなしとげたことでも、富を築いたことでも、人の賞賛を浴びたことでもなく。
ただ、人を愛し、愛され、感謝されて人生を送れれば、それが何より素晴らしい。
そして、それを思い浮かべながら「悼んで」もらえれば、まごうことなく「成仏」出来るような気がします。
分かっているようで、実は取り紛れていた人生の真実を、もう一度目の前に広げて見せてくれたこの作品に感謝。

テーマ:オススメの本 - ジャンル:本・雑誌

もっと言葉を
オバマ大統領のスピーチを集めたCDが人気だそうな。
じゃ、そのついでにこんなのもいかがでしょう?

図書館で見つけて、聞いてみたのだけど、これが、いろいろと考えさせられたんですねぇ。
そんなに英語が堪能ではない私には、正直???という内容もあったけど、さすがにJ.F.ケネディ大統領のスピーチは、「別格」だと感じ入った。
例の、「国が自分に何をしてくれるかではなく、自分が国のために何が出来るか」という、例の有名な就任演説である。
このCDには、トルーマン大統領からブッシュ大統領までの歴代大統領のスピーチが納められているのだけれど、その中でも、やっぱり群を抜いている。
アメリカの国益や自分の任期中の公約だけでなく、自由の精神を世界に広げることの大切さを論じて、世代や国家間を超越しているところが素晴らしい。
オバマ大統領がケネディのスピーチを模範としているというのが良く分かる。

もう一つわかったのが、やはり政治家は「演説」や「言葉」が命だと言うこと。
人気の高い大統領は、みんな、スピーチが上手い。
英語力不足の私にでもわかるくらい、その差は歴然。
感情がこもっているか、強調する言葉が的確か、どのように強調されているか、人の耳に熱っぽく届くかetc.etc.………
フォードやカーターといった、国民に不人気だった大統領は、はっきり言って、その辺がヘタ。
平板だし、妙な声の張り上げ方をするか、あるいはボソボソ語って、おおよそ「スピーチ」とは思えない。
つまりは、国民に届く言葉を発することが出来ない政治家は大統領にはなれない、あるいはなれたとしてもすぐに権力の座を追われてしまうということで、いかにアメリカ人が、大統領の「言葉」に重きを置いているかが分かる。
日本とは全く違うよなあ。
日本人に「言葉」で影響を与えた政治家と言えば、小泉さんくらいだけど、あれは「感動した!」とか「自民党をぶちこわす」とか、1フレーズだったからねぇ。

というわけで、別に英語が分からなくても結構楽しめるCDです。
もちろん、対訳がついているので、訳文を読むだけでも、個性が良く分かる。

面白かったのがもう一つ。
これは歴代大統領の名スピーチ集と言うだけあって、ケネディは就任演説だったり、レーガンはスペースシャトル・チャレンジャー号の事故直後の哀悼の意を伝えるスピーチ、お父さんブッシュは湾岸戦争の勝利宣言、息子ブッシュは、9.11テロ直後の国民へのメッセージだったりで、アメリカの歴史上ポイントとなる時点でのものなのに、なぜかクリントンだけが、モニカ・ルインスキーとの「不適切な関係」についての「釈明」。
外交に関しちゃいろいろ功績もあって、それなりにスピーチもしてるだろうに、なぜか収録されてるのはこれ。
本人としては情けなかろう。
もっとも、「なんでこんな事しなくちゃなんないかなあ」という悔しい真情はよく出ていたし、いずこでも男の言い訳はこんなもんねぇという感慨は持てたから、面白かったんだけどね。
「告白」すると……ミステリに望むもの
今、ものすごく売れてるらしい、ミステリー。
やっと入手したので、早速読んでみました。

とある中学校の終業式。
クラス担任の女教師が、「今月いっぱいで教師を辞めることにした」と別れの挨拶を始めた。
彼女が教師を辞めるのは、ある事件があったからだった。
そして、その日、別れの挨拶をしながら、彼女は生徒達に告げた。
「私の子供を殺した犯人がこの中にいる」と……

巧みです。導入部が凄く上手い。
おかげで、次々とページをめくってしまいました。
ふむう、売れるのも当然、ですね。
もともと第一章の、先生の告発部分だけで、とあるミステリーの新人賞を受賞し、その後の生徒達を描いた部分を加えて、一冊の本にしたそうです。
道理で一章だけで完成されている感じ。
「終業式での先生の告発」という道具立ては秀逸でした。
すらっと読み終えられましたし。

でも、多分、読み直す気にはならないだろうなあ。
中学生くらいからミステリが大好きで、クリスティから始まり、ディーヴァーにいたるまで、いろいろ読んできましたが、どーもここのところ、ミステリに食指が動かない。
もちろん、読んではいるけど、何度も読み返したいという気が起こらないのです。
作品のせいではなく。
日本のミステリやホラーは、今や世界でもトップクラスでしょう。
英語圏の作品ばかりもてはやさず、日本の作家のミステリを読んでご覧さ、と世界の皆様にお勧めしたいくらいです。(大げさ(^^;))

多分、神戸や秋葉原の連続殺傷事件などを経てしまうと、どこか、何か救いのある作品でないと、拒否反応を示してしまうのかもしれません。
私が、宮部みゆきさんやジェフリー・ディーヴァーの作品に惹かれるのは、扱われる事件がどれだけ陰惨でやりきれないものであっても、どこかに、生きていく希望や人間の強さが描かれているからだと思います。
「火車」は、私が宮部さんの最高傑作だと思っている作品ですが、これだって随分酷い事件です。
でも、登場人物の行動に、愛があり、友情が垣間見え、事件の後も、関わった人々が前を向いて生きていくのだろうという希望を感じます。
「模倣犯」にしても、「楽園」にしてもそうだし、次々と人が、しかも大量に死んでしまう「孤宿の人」には、泣かされます。
ジェフリー・ディーヴァーの人気シリーズ「リンカーン・ライムもの」の主人公、リンカーン・ライムは、考えること、話すことは出来ても、首から下は指一本動かすことが出来ないという過酷な生活を強いられながら、事件捜査にあらゆる経験、能力を活かして立ち向かいます。
決してスーパー・ヒーローではない、生身の人間としての苦しみを背負いながら生きていく彼の姿に、ストーリーテリングの巧みさだけでない、ディーヴァーの「人間に対する尊厳」を感じるのです。

ああ、また「火車」が読みたくなってきた。
ディーヴァーの新作「スリーピングドール」も。





テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

奧さまはつらいよ
「人の体って、わかりやすくできている(中略)指先、毛先、かかとといった体の末端は、きっと何かのセンサーなのだろう。乾いたり、ごわついたり、その人の心の状態をあっさりと伝えてしまう」
うんうん、そうですよね。
ここのところ、手先の荒れが気になる私ゆえ、納得。

こんな風に考えている主人公は、ネイリストで、自分の店を持っている。
でも、本人いわく「デブでブスで、雑誌に出てくるネイリストとは大違い」。
そんな彼女の店を訪れるのは、ネイルなんかしたことがないという50代以上のお客がほとんど。
彼女たちに、今までしたことがない爪のおしゃれを提案するのが楽しいという主人公は、心優しくて、働くことに誇りを持つ素敵な女性だ。
この人の、何かを諦めた、でも人生を諦めたのではない淡々とした生き方が潔くて、愛しい。

夏石鈴子さんのこの短編集↓には、そんな女性(主に奧さま)が多数登場する。

子供のいる人、いない人、働いている人、いない人……それぞれ違うけれど、立場は同じ。
みんな「奧さま」。
この本に登場する「奧さま」には、不倫している人も、韓流ドラマにはまりこむ人も、三食昼寝つきでお気楽に暮らしている人もいない。
おおよそ、日本のマスコミや男達が「気楽だよな」とひとくくりにする「主婦」とは縁遠い。
彼女たちは、ごく普通に家事をし、子供の面倒を見、時にはパートに出、PTAの会合に出席する。
おしなべて「普通の奧さま」。
なんの苦労もなさそうでいて、その心の中にはいろんなものが渦巻いている。
どうしてこんな事も出来ないのか、と我が子に絶望する母。
無神経な姑の言動に怒りをため込む嫁。
いかにもごくありきたりな状況だけれど、彼女たちの心のつぶやきに、ついつい頷いてしまう。
みんな、頑張って生きてるのよ。そうだよね、と。

作者の夏石さんは、後書きの中で、だいたいの人は苦しみ悲しみがあっても、それを外には見せない、とりあえず何かあっても、外からは普通に見せるのが人間の才能だと言っている。
だから、この物語の主人公達は、みんな「普通」なのだ。
だけど、物語の中で、彼女たちは「逆襲」する。
そうしないと、誰も主婦の言うことを聞いてくれないから。
作者にとって主婦とは「雄々しい人」で、「たった一人で自分の全てを家族に差し出している善意の人」だそうだ。
日頃は自分が「主婦」であることをあまり意識したことがない私も、この言葉に「そうだよねぇ」と、とーっても共感する。
夏石さんの、この視点が物語を貫いているから、主人公達は皆愛しい存在で、「がんばれ同士よ」と、肩など叩きたくなるのだ。

結婚してなくても、主婦でなくても、子供がいなくても、この主人公達をきっと好きになるはず。
私はしばらくぶりに、ほっこりした爽快感を味わった。
この作品に感謝しつつ、女性の皆様にお勧めします。

テーマ:オススメの本 - ジャンル:本・雑誌

働くのが好きになる本
「ミゾウユウ」ならぬ、「未曾有」の不景気。
仕事があればいい方、仕事が嫌だ、嫌いだ、辞めたい……なんて甘っちょろいこと言えるご時世じゃありません。
働ければいい方、正社員になれれば超幸運
それは分かってるけど、でも、やっぱり「仕事に行くのが楽しくて仕方がない」なんて人、少ないですよね。
日曜日の夜になると暗い気持ちになる「サザエさん症候群」も発症するし、
月曜日はうんざりのブルーマンデー。
「こんな仕事辞めてやる!」と、タンカ切れない分、ストレスが溜まるってもんです。
そんな「働く人」にお勧めしたいのが、山本幸久さんの小説。
デビュー作の「笑う招き猫」以来、その軽妙な筆致がお気に入りで追っかけしている作家ですが、この人、「会社」で「働く人」を描くのが抜群に上手い。
仕事なんかしたくないけど、職場に行きたくないけど、でも、ひょんな事から、怖いと思っていた上司の人情に触れたり、意外なやりがいを見つけたりして、全然意識してなかった仕事や職場への愛情や、仕事の楽しさに気づく……その経緯やさじ加減がとっても良いのです。

↑新作は、バスガイドのお話。
同期の友人に、風呂場で脇腹をつままれ、「メタボバスガイド」と呼ばれる主人公。
自分がバスガイドに向いているのか、バスガイドという仕事そのものが好きなのか、わからない彼女が、新人研修の指導員にされ、彼女たちに振り回されたり、同期や上司の意外な面に触れたりして、やがて立派な?バスガイドになっていくというお話。

↑こちらは、店舗デザインの会社に勤める三人のオヤジ(っていうにはちょっと若いけど、酔っぱらうと初対面の女性の胸を揉んでしまう営業マン、昔風イケメンなのに風俗好きで寡黙なメンテナンス担当者、上司にどんなに反対されようと自分のデザインにこだわり、自腹で借金してまで機材を買ってしまったりする設計者……となると、オヤジと呼ばれても仕方ないでしょう)を中心に、やる気のない新人や、いけ好かない上司、頼りない社長、最強のお局など、同じ会社の個性溢れる面々が活躍するお話。
両作品に、かつての「凸凹デイズ」の登場人物がちらっと現れるのも楽しい。
どれも、明日会社に行くのが嫌だなあ……という人にオススメです。

テーマ:オススメの本 - ジャンル:本・雑誌