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おいしい本

昨日の朝日新聞に付いていたbe Extraは、おいしい本の特集。
私にとっての「おいしい本」の一番古い記憶は、小学生低学年の頃に読んだ「少女探偵・ナンシー・ドルー」。
これ、アメリカでは有名なティーンエイジャー向け探偵小説だったらしい。
内容はすっかり忘れてしまったけど、挿絵にKKKのあの覆面をかぶった男たちが描かれていたことと、それからいかにも小学生の心をくすぐる「おいしそうなメニュー」が登場していたこと。
ナンシーが普通に食べていたパンケーキやパフェなどは、その当時の私には、両親にデパートに連れて行ってもらうときにしか口にできない「ハレ」の日の特別なものだった。
デパートの特別食堂には置かれていないようなメニューも沢山出ていて、食いしん坊な私は、出てくるメニューを、こうだろうか、ああだろうかと勝手にイラストにして、切り抜いた上に色を塗ったりしていた。
うーん、今考えても、相当食いしん坊だな、私。

中学生にもなると、「赤毛のアン」に登場する、「プリザーブ」とか「マリラの作ったスモモのパイ」が、取って代わる。
プリンスエドワード島の燃えるような赤い土や、風に揺れるリンゴの木と同じくらい、マリラの台所と、そこで作り出される料理に胸が痛くなるほど憧れた。
後年、島の赤い土や、大空にのびたリンゴの木・スノーホワイトは実際に目にしたが、マリラのような台所にはついには入れずじまい。
民泊したのでキッチンに入れてもらったことは何度もあったのだけど、残念ながら、当時の古い台所を使っているおうちはさすがになかった。

大学生やOLの時にはグルメ雑誌や情報誌をチェックして、何度も話題の店に出かけた。
でも、実はそんな情報誌よりはるかに私の食いしん坊心をそそったのは、我等がおセイさんこと田辺聖子さんの一連の作品だ。
田辺さんの小説には、いつもいつもおいしいものが山ほど登場する。
主人公は必ず味覚の優れた、食べ物のおいしさをキッチリ味わえる女性ばかりで(男性も)、もちろん、それはそうでなくてはならなかった。
何たって、食べることは生きることと直結してますからね。
拒食症とか味覚音痴の主人公は、それだけで生きるエネルギーが低い。
それじゃあ、主人公としての馬力が足りないってもんです。
もちろん、田辺さんの小説の主人公は生きる能力に優れているので、当然のようにおいしいものを作ったり、おいしいものを食べに行ったりする。
田辺さんは恋愛を描いても達人だけど、食べ物の描写にかけては当代随一と言っても過言じゃないと思う。
池波正太郎さんが江戸の食を描いた達人だとしたら、大阪の味を描く匠は田辺聖子さんだ。
半信半疑な方は田辺さんの短編小説集を読んでみられることをオススメする。
わけても「春情蛸の足」は、短編のすべてに食べ物の名前が付いていて、読み終わったら絶対どれかは食べたくなること必定。

最近読み直した本の中で、思わずよだれを垂らしそうになったのは、有吉佐和子さんの「開幕ベルは華やかに」。
この作品に登場する、演出家で推理小説作家の渡なる人物は、無類の美食家なのだけれど、この作品が書かれた1982年、今から二十数年前に、イタリア製のアンチョビだの、函館で作っているサラミだの、ガルガンチュアのパンだのが続々と登場する。
ワイン好きにはたまらない。
しかもさすが有吉さんの筆だけあって、今にもオーブンからチーズを焼く匂いと音が立ち上ってきそうな気にさせられる。
あー、ワイン飲みたーい。

思い出すときりがないくらい、おいしいものが登場する小説が浮かび上がってくる。
ストーリーを忘れたものすらあるってのに、なーんでこう食べ物ばっかり思い出せるんだろう。
作家の皆様には、こういう食欲の固まりの読者のためにも、ぜひこれからも「おいしい本」を書いていただきたいものです。




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きいろいゾウ

「さくら」で、滂沱の涙を流させてくれた西加奈子さんの第3作。
語り口の優しさと、その優しさの中から流し込まれる残酷さに、ひやっとしながら引き込まれる。
それが、私の感じる西加奈子さんの作風。
この「きいろいゾウ」も、そうだ。

主人公は互いに「ツマ」「ムコ」と呼び合う夫婦。
でも夫婦だからそう呼び合ってるのではない。
ツマは、本名が妻利さんで、ムコは同じく武辜さんなのだ。
二人は田舎の古びた一軒家に住み、ムコさんはまだ芽の出ていない小説家で、老人介護施設で働いている。
ツマは、犬や鳥や草花と会話する特技?を持っていて、うちのことをしながら、近所の人とも仲良く暮らしている。
一章を読んでいると、とってものどかで優しいおとぎ話だ。
でも、ムコさんは愛する叔母を自殺で亡くした過去があり、ツマの心臓は生まれつき小さくて、体も心もとても繊細だ。
二人の過去が少しずつ表れてくると、心の中にひんやりと影がさす。
のどかなおとぎ話が悲しいお話になるんじゃないかとハラハラする。
ツマとムコさんが醸し出すふんわりした日だまりと、忍び寄るハラハラ。
それを両方楽しみながらページを繰る。
「さくら」同様の西加奈子ワールドに取り込まれているしるしだ。
二人を取り巻く田舎の人々や、都会からやってきた登校拒否児、彼を慕うわがままな女の子も、みんな優しいおとぎ話の登場人物だ。
でも、みんなどこかに「悲しみ」を背負っていたりする。
それがまた良い。
ただのおとぎ話にならないところがね。

けど、こういうテイストの作品、増えたよなあ。
みんな、世の中に疲れてるせいかしらん。
私もその一人で、だから西加奈子さんや瀬尾まいこさんの作品に惹かれて、ついつい買ってしまうのかしらん。
心がひりひりするような物語、読む体力、精神力を失っているとすれば、それは本読みとしてちょっと寂しい。




テーマ : やさしい気持ちになれる本
ジャンル : 本・雑誌

そろそろくる

「漢方小説」で話題になった中島たい子さんの本。
そろそろくる、の、そろそろくるってなによ?というと、これは女性だけのうっとうしい期間。
主人公の秀ちゃんは、PMS(月経前症候群)で、生理前は心身共にダウンする。
涙もろくなったり、いらだったり、食欲が止められなくなったり。
秀ちゃんはイラストレーターで、学生時代の友人に一緒に個展を開こうと誘われ、その気になるのだけど、毎月毎月、その時期にになると「とってもできない」と、落ち込んでしまうのだ。
そんなPMSまっただ中の秀ちゃんは、友達の弟・基樹くんとつきあうことになるが、基樹君にもある症状があるらしく・・

こう、何というか、これと言って事件も起こらなければ、主人公が波乱に巻き込まれるでもない。
恋愛もしているけど、喧嘩もしないし、かといって心変わりもない。
でも、中身がスカスカしているわけではなく、「わかるなあ、その気持ち」とゆるゆるうなずいているうちに一冊読み終わっちゃいました、という感じ。
なんというか、不思議な味わいのある作品なんだわね。

私が一番共感したのは、秀ちゃんのお母さんやお姉さんが、秀ちゃんが個展に参加するのを喜び、秀ちゃんを「芸術家」だと思いこみたがり、「うまく書けたらコンテストに出したら?」と提案したり、「イラストレーターで名前が出てるのが有利かも」と勝手に推測し、小学校の時描いた絵が賞を取ったことを「栄光」と呼ぶ。その絵を秀ちゃんはちっとも気に入っていないのに・・ってところ。
お母さんもお姉さんも、もちろん悪気がある訳じゃなく、秀ちゃんを励ましたいし、秀ちゃんが芸術家だったら鼻が高いと思ったりしてるのだ。
でも、描いたり、書いたりしている人間、ものを作っている人間は、そういう無邪気な善意に出会うたび、穴があったら入りたいほど恥ずかしい思いをする。
よほどの自信家か、実際に「芸術家」になった人ならともかく。
秀ちゃんは不機嫌になり、周囲は当惑する。
その描写が、「わかるよぉ、わかる」とうなずかせる。
繊細だけど、繊細すぎないところがよいのだな、この人の小説は。
(あんまり繊細な文章は、読み進むうちに疲れてしまうしね)
主人公は独りよがりな面が多々あるのに、文章はちゃんとそれを抑えてる。
PMSの時に読んでも、それ以外の時に読んでも、ゆるっと心地よいのでは?


テーマ : **本の紹介**
ジャンル : 本・雑誌

沖で待つ

言わずとしれた今年度の芥川賞受賞作。
選評によると「女性総合職の出現によって女と男の対等に働く場が生まれた。それは新しい現実である。その新しさがいかなる意味を持ち、どのような可能性を人間にもたらしたかを追求したのが本作であるといえよう。ここに見られる女と男のと間にあるのは、恋愛感情でもなければ単なる友情でもない。仕事の中で灼熱する生命の閃光を共有することにょって生まれた新しい関係である」だって。
さすが芥川賞、選評まで純文学的?

毎年直木賞はそれなりの興味を持って注目していて、「なるほど、この人か」と思ったりするのだけど、芥川賞はほとんど興味なし。
自分の知っている作家がノミネートされることが少ないのもあるけど、何回か受賞作を読んで、「ああ、やっぱりワタシには、ジュンブンガクは向かないわ」と思ったからだ。
(本家本元の芥川作品はかなり好きなんだけどねぇ)
しかし、この「沖で待つ」は、楽しみながら読めた。
バリバリ働く主人公の女性に共感できたし、その友人で、不慮の事故で死んでしまう「太っちゃん」も、「いるいる、こういうタイプの人」と実感できた。
お話はシンプルで、私の苦手な、もってまわったようなジュンブンガク的?表現もなく、最後のフレーズはくすっと笑わされて、読後感は気持ちよかった。

でも、なぜにこの作品が芥川賞?直木賞ではなく。
その辺が毎回のことながらわからない。
選評の古くささ(ま、選評ってのはいかにもそれらしく小難しいことを述べ立てなければならないんでしょうが)もいただけず、芥川賞?なんだかなあ・・と言う気になってしまうのだ。
これじゃあ、芥川さんも草葉の陰で泣いてるんでは?
ま、私の敬愛する評論家・斉藤美奈子さんの「読者は踊る」によると、<芥川賞は(直木賞もだけど)、新人作家の中から自分たちの仲間に入れてやっても良さそうな人材を一方的にピックアップする一種の就職試験>で、<選考委員は文壇の人事部>ということになるらしい。
そういわれてみると、納得できるってもんかも。
しかし、「無事文壇入り就職試験合格おめでとうございます!」と喜んでいいものなのかしらね?絲山さん。



テーマ : 売れてる本
ジャンル : 本・雑誌

包帯クラブ

天童荒太さんの新作である。
天童さんの作品はほとんど読んできた。
「永遠の仔」はもちろん、「孤独の歌声、」「家族狩り」「家族狩り5部作」・・
その筆力に圧倒され、物語に飲み込まれ、本を読むということにものすごく熱中させられながら・・それでいて辛かった。痛かった。
そのつらさや痛さと向き合え、忘れるなと自分を叱咤しつつも、読後は疲労した。
天童さんの作品と向かい合うには、こちらも体力、気力が必要なのだ。
(そして、そういう作家との出会いは、本読みには欠かせない)

とは言いつつも、世の中生きていくと、そうそう体力、気力を消耗するような本とはつきあうのが辛いときもありますわね。
天童さんの作品は読みたいけど、今はちょっと、今日はちょっと、ここのところはちょっとね・・って。
家族狩り5部作を読み終えたときの私はまさにそういう感じだったのだけど、今回出た「包帯クラブ」は、ためらいなく物語の中に入って行けた。

人は誰でも、生きていれば傷つく。
他人から見れば、どんな他愛のないことにでも。
そんなことで傷ついたんだ、ということを周りには悟られたくなくて、自分も認めたくなくて、傷から目をそらす。
と、その傷は化膿し、ぐちゅぐちゅと膿んでゆく。
やがて、突拍子もない死に走らせたりするくらいに。
他愛のない傷を傷として認めよう、そしてその傷に包帯を巻いてあげよう。
傷を傷として認めることから、その傷は少しずつ癒され、再生されていくから。

と、これはそんなお話。
これ、本当に天童作品か?というくらい優しく、自分の中にあった無数の小さな傷にしみていく。
でも、一つ一つの物語はきちんと「痛み」や「つらさ」を伝えている。
安直な癒しや慰めではないあたりが、天童作品の天童作品たるゆえんだろうなあ。
今までの天童作品を、「重すぎて辛い」と思っていた方にオススメします。

テーマ : やさしい気持ちになれる本
ジャンル : 本・雑誌

買い物おバカ日記

カード破産なんて、この世の中によくあること。
でも、2万ドルのカード負債を抱えた29歳の女性が、「お金をください」っていうサイトを作るなんてあり?
おまけに、そのサイトにホントに寄付してくれる人がいるなんて、あり?
あるんですねぇ、それが。
「2万人の人が一人1ドルくれたら、負債が返せる」という発想で、彼女・カリンは実際にサイトを作った。
そして、寄付と、自分で働いたお金と、浪費して買ったものをネットで売ったお金で、借金を返済したのだ。
その顛末を書いた本がこれ。


この日本語タイトルはいただけないけど、内容はおもしろかった。
本の前半、カリンは本当にタイトル通りの浪費バカで、「オイオイ、それを買うか」というものを山ほど買い込む。
このあたり、サブタイトルの「ショッピングの女王」である、中村うさぎさんと似てないこともない。
でも、中村うさぎさんより腹が据わってない。
カリンはいつも「何とかなる」「払えるはず」と漠然と思いながらNYの高級デパートに通うのだ。
その時々の明細書が掲載されているのだけど、よくもまあ、買いも買ったり。
立派な買い物依存症。

でも、これだけの借金をして、おまけに9.11事件のあおりも受けて失業し、どん底に落ち込むのに、彼女はそこから立ち直る。
「save Karyn」というサイトを立ち上げ、自分のバカな失敗を赤裸々に告白しながら、ユーモアたっぷりの文章をつづっていく。
もちろん山ほどの嫌がらせメールを受けながら。
自己破産はイヤ、自分に負けてしまう、人に自分の借金を押しつけることになるだけ、と踏ん張る姿は勇ましい。
とてもグッチやプラダのバッグにかまけていたのと同じ人物には思えない。

で、彼女のサイトは大反響を呼び、タイムやウォールストリートジャーナルなどの新聞や雑誌に紹介されるわ、ラジオやテレビに出るわ、「フォレストガンプ」のプロデューサーが映画化権をとるわ・・で今や本のプロモーションで世界中を飛び回る身となった。
いやあ、この波瀾万丈さ、オモシロイ!
前向きでユーモアのある文章もなかなかにおもしろいけど、ニューヨーカーの暮らしっぷりや、買い物の様子も楽しめる。

ちなみに、彼女のサイトはまだ続いているらしい。
本は世界中で出版され、その一覧がこちら↓
http://www.savekaryn.com/SaveKarynTheBook.htm
やっぱ、日本語タイトルはイケてないなあ。
個人的にはオランダと台湾のがいいんじゃないかしらん?

こんなサイトでお金が儲けられたらいいなぁ・・
なんて真似しないように。
山ほど類似サイトが作られたらしいけど、結局成功しているのは彼女だけ。
オリジナリティが大切なのよね。もちろん、中身と。

テーマ : 心を強く幸せに出来る本
ジャンル : 本・雑誌

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Author:dancingwolf
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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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