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そろそろくる

「漢方小説」で話題になった中島たい子さんの本。
そろそろくる、の、そろそろくるってなによ?というと、これは女性だけのうっとうしい期間。
主人公の秀ちゃんは、PMS(月経前症候群)で、生理前は心身共にダウンする。
涙もろくなったり、いらだったり、食欲が止められなくなったり。
秀ちゃんはイラストレーターで、学生時代の友人に一緒に個展を開こうと誘われ、その気になるのだけど、毎月毎月、その時期にになると「とってもできない」と、落ち込んでしまうのだ。
そんなPMSまっただ中の秀ちゃんは、友達の弟・基樹くんとつきあうことになるが、基樹君にもある症状があるらしく・・

こう、何というか、これと言って事件も起こらなければ、主人公が波乱に巻き込まれるでもない。
恋愛もしているけど、喧嘩もしないし、かといって心変わりもない。
でも、中身がスカスカしているわけではなく、「わかるなあ、その気持ち」とゆるゆるうなずいているうちに一冊読み終わっちゃいました、という感じ。
なんというか、不思議な味わいのある作品なんだわね。

私が一番共感したのは、秀ちゃんのお母さんやお姉さんが、秀ちゃんが個展に参加するのを喜び、秀ちゃんを「芸術家」だと思いこみたがり、「うまく書けたらコンテストに出したら?」と提案したり、「イラストレーターで名前が出てるのが有利かも」と勝手に推測し、小学校の時描いた絵が賞を取ったことを「栄光」と呼ぶ。その絵を秀ちゃんはちっとも気に入っていないのに・・ってところ。
お母さんもお姉さんも、もちろん悪気がある訳じゃなく、秀ちゃんを励ましたいし、秀ちゃんが芸術家だったら鼻が高いと思ったりしてるのだ。
でも、描いたり、書いたりしている人間、ものを作っている人間は、そういう無邪気な善意に出会うたび、穴があったら入りたいほど恥ずかしい思いをする。
よほどの自信家か、実際に「芸術家」になった人ならともかく。
秀ちゃんは不機嫌になり、周囲は当惑する。
その描写が、「わかるよぉ、わかる」とうなずかせる。
繊細だけど、繊細すぎないところがよいのだな、この人の小説は。
(あんまり繊細な文章は、読み進むうちに疲れてしまうしね)
主人公は独りよがりな面が多々あるのに、文章はちゃんとそれを抑えてる。
PMSの時に読んでも、それ以外の時に読んでも、ゆるっと心地よいのでは?


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ジャンル : 本・雑誌

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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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