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的確な書評~~きみがくれたぼくの星空~~

私はあまり書評を指針に本を選ぶ方ではないのだけど(斉藤美奈子さんは別よ)、朝日新聞の書評欄は割合参考にしている。
で、今日の書評は角田光代さんの「きみがくれたぼくの星空」

イタリアの作家の作品である。
深い知性の持ち主だが、皮肉屋でニヒリストの主人公は、老人ホームで暮らす孤独な老人。
子供をまだ幼い頃に事故で亡くし、その傷はまだ剣のように心に残っている。
物理学者として、世紀の大発見をする一歩手前で、その夢を砕かれ、以後天文学者となり、妻亡き後ついに脳血栓で倒れて、車いすで、おむつをつけ、介護をしてもらって暮らすことになる。
同室の老人も、ホーム内の老女たちも介護士も、訪れてくるボランティアも嫌いで、何かというと「クソッタレ」という言葉話浴びせかける偏屈な男。
そんな主人公が、80才にして、75才の老女と恋に落ちる。
かくして、訳者も出版社もこの小説を「究極のラブストーリー」という。
でも、角田さんは、「これをラブストーリーとくくってしまっていいのか?」と疑義を唱える。
「ここに描かれているのは、恋愛でも死でもない、人がその生を生ききることだと思えて仕方がない」と。

この書評に興味を持ったので、早速図書館へ車を走らせた。
一冊だけ在架しているというのが図書館のサイト検索でわかったからだ(いやあ、こういうシステムは便利ですねー。ホント。これでPCから予約までできれば言うことないんですが)。
で、早速読んでみて
私もまったく角田さんの評する通りだと思った。
初見は、老人施設内の話でもあり、ちょっと「君に読む物語」みたいな感じかな、と思ったのだが、これはそうしたラブストーリーとは違う。
この本の中で一番心に残ったのは、次の一節だ。
「(略)それを証明する夢を夢を一生持ち続けた人は、たとえそれが証明できなかったとしても、大きな夢を捨てなかったと言うことだ。そのために生きるに値するような、そしてそのために語るに足る人生を送るような、そんな夢を」
角田さんの言う「人がその生を生ききること」を端的に表している一節だと思う。

同業の作家の書く書評って、実はあんまり好きになれなかったりするが、角田さんは作家というより、本当に本が好きな「本読み」としての視点があって、そこへもってきてもちろん作家としてのボキャブラリーが豊富なわけで、こういう物語にめぐり逢う機会を与えてくれる。
ありがたや、です。
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テーマ : 本の中にあるいい言葉
ジャンル : 本・雑誌

アメリカのTVドラマ

やっと仕事が一段落付いたので、話題のDVDを借りてみた。

主人公のジャックがめざめると、そこは南海の孤島。
そして、そこには、ジャックの乗っていた飛行機の無惨な残骸と、生き残った48人が。
救助を待ちわびる乗客たち。
妊婦もいれば、魂を失ってしまったような老人も、もちろん怪我人、そして、囚人すら紛れ込んでいるらしい。
だが、彼らの乗っていた飛行機は、飛行ルートからはずれていたらしく、救助はなかなか現れない。
そして、その島には、何か恐ろしい生き物が生息し、乗客たちの命を狙っている。
絶体絶命の危機の中、ある時は助け合い、そしてある時はいがみ合う生存者たち。
彼らの運命は?

って、パニック映画の典型みたいな話なんですが、これが、テレビドラマだっていうから驚き。
こんなのがテレビでできるわけ?
この島、どこよ?
まさか、全部CGじゃあるまい?
墜落した航空機が、出てくるよ、ちゃんと。
現物でしょ、これ?
金かかってんなー!!というのがまずもっての感想。

でも、それだけじゃない。
乗客たちのキャラクターのかき分けや、その構成がとっても巧み。
脚本がウマイ!
音もいいんだよねー。
最近の日本のドラマのように、役者のせりふが聞こえないくらいBGMつけるような愚は犯さず、でも、いいところで鳴り出す音は、確実に恐怖心を駆り立てる。
センチメンタルなBGMが流れたりしないところがとても良い。
まだシーズン1の1本目を見ただけだけど、目が離せない!!
うーん、こんなの日本じゃ絶対作れないよなあ。

元々アメリカのTVドラマは充実してたけど、ここのところ益々パワーアップしてきた。
何でも、ハリウッドで作る映画が、膨大な金額の大作か、全然お金をかけない小品かの二極化したことによって、その中間層の制作者、技術者、脚本家、役者がどっとテレビの世界になだれ込んでいて、それがいい効果を上げている、と聞いたことがある。
いやあ、ハリウッドの大作なんか見に行かなくていいわ、わたし。
LOSTの続きと、他の注目作をしっかり見たい。
ああ、でもけっこう膨大にあるのよね。
嬉しい悲鳴、です。

テーマ : 海外ドラマ(欧米)
ジャンル : テレビ・ラジオ

今月の小説現代

今月の小説現代から、私の大好きな、ぼんくら同心平四郎と恐ろしいほどの美少年弓之助コンビが登場する「おまえさん」の連載が始まった。
今は宮部みゆきさんと言えば、「ブレイブストーリー」が話題沸騰中なんだろうけど、わたしにとっては、宮部さんと言えば、なんと言ってもミステリ&時代小説ですよ。
ミステリは、現実が小説を超えてしまうような陰惨な事件が続いている昨今、宮部さん自身つらくなっている節が見え
(実は、読んでる方もちょっとつらい。「模倣犯」はとっても優れた小説だけど、孫が被害者になったおじいちゃんや事件に巻き込まれた少年の姿は、やっぱり痛すぎた)
時代小説に宮部ミステリの真髄を移行しているように思える。
なので、この2作がたまらなく大好きになってしまいました。
登場人物のキャラクターが明るいから、陰惨な事件も何とか耐えられる。




この続きを待っていたのですわ。
いよいよ始まったばかりなのだけど、もう心は「おまえさん」の単行本化。
連載をチビチビ読むのもいいけど、やっぱり、がーっと読み通すのが本読みの楽しみじゃあないですか。
ああ、待ち遠しい。

今号の小説現代は、他にも
「東京タワー」のリリー・フランキー氏と敬愛する西原理恵子さんの対談、
伊集院静氏と角田光代さんの対談なんかもあって、読み応えアリ。
えらいぞ、小説現代!
「おまえさん」をどんどん進めていってくだされ!

テーマ : 本に関すること
ジャンル : 本・雑誌

TOUR1989

先週の朝日新聞の書評欄で、斉藤美奈子氏が「大好き」と評していた本。

これは買わずばなるまい、でしょう。
斉藤美奈子ファンとしては。
んで、読んでみました。
うーむ、不思議な小説です。

普通の暮らしを送っている主婦のところに、全然知らないと思われる男性から手紙が届いた。
しかも、その男性は15年前に香港で「迷子」になったまま行方しれずになった大学生で、その当時、旅先でパックツアーの乗客がひとり戻ってこない「迷子ツアー」が開催されていたという・・

ってなのが発端です。
こう書くと、何かすごいミステリの匂いがする・・とおもうでしょ?
それが、全然「ミステリ」じゃないんだな。
この小説は4つのエピソードからなっているのだけど、その一つ一つの作品になぞめいた不思議感は漂うものの、おどろおどろしさも、犯罪も、謎解きもない。
ただ、あの当時の香港には、ぽっかりとした穴のようなものがあって、迷子ツアーの「迷子」たちはそこにころっと落ちてしまったのではないか・・という気にさせられる。
返還前の香港には、ホントになんかそんな雰囲気があったのだ。
この小説に頻繁に登場する香港の中心地は、私が半年に及ぶ長旅を終えて香港に立ち寄ったときに過ごした場所で、その猥雑な感じはとってもなじみ深い。
そう、私ももしかしたら「迷子」になっていたかもしれないと思う。
私が一番好きなのは、4つのエピソードのうちの「テディ・リーを探して」。
一番、生の人間を感じられて。

多分、私が本屋で買うとしたら、絶対選ばない作品であることは間違いない(私は全編手に汗握る、とか、骨太、とか、人情もの、とかが好きで、天然不思議系には縁がないので)。
でも、普通は手に取らない本を読ませるのが、書評家の実力かもしれません。
って事で、斉藤美奈子さんに一票。

同時に買った同じ作者の「イトウの恋」をこれから読みふける予定です。

テーマ : 今読んでいる本
ジャンル : 本・雑誌

陰日向に咲く

ご存じ劇団ひとりの書き下ろし小説。

やっと手にして読んでみた。
噂通りの、才気が感じられる短編集。
一つ一つの作品が微妙にリンクしていて、凝った作りになっている。
さすがと思ったのは、若い女の子の語り口で、「ああ、いるいる、こういう天然ちゃん」と共感できた。
ただ、全編、劇団ひとりが話してくれている(あるいは、演じてくれている)ような感じがして、それが多分この小説の面白いところなんだろうけど、しかし、「小説」という単体で考えたときにはどうなんだろう?
この「陰日向に咲く」は、「芸人としての劇団ひとりが書いた小説」をヌケ切れてない感じがする。
(いや、だから、抜けきれなくてもいいのかしれないんだけど)

ま、私、これを読んだ後に、前に紹介した乙一の「失はれる物語」読んじゃったしな。
ホントの「小説書きの小説」を読んだ後じゃ、分が悪い。

多分、劇団ひとりじゃない物書きとして、劇団ひとりの芝居や朗読が頭に浮かばないような物語がかけたとき初めて、小説書きの小説として認められる気がする。
十分な才気や、視点は感じられるから。
かといって本人がそれを望んでるかというと、どーなんだかわかんないけど。

テーマ : **本の紹介**
ジャンル : 本・雑誌

失はれる物語は失われない

人間にとって最も崇高な精神は自己犠牲だ、と思ったことがある。
例えば、子供を救うために自らの命を差し出す人のように。
でも、一つ間違うと、自己犠牲は「国を守る」「義勇軍」のように、危うい方向へ進む旗印として祭り上げられかねない。
でも、そんな大仰なものではなく、淡々として美しい自己犠牲のお話がある。

私にとって、作者の乙一氏は、ずっと、「ホラーな人」のイメージで、故に近寄らなかったのだけれど、ネット上の知人が別作品をオススメしているのを知って、偶然にも手にとってみたのだ。
ホラー作品を読む前に、この物語と出会って良かった。
乙一作品とは幸せな出会いをしたことになる。
そう実感させてくれるくらい、この物語は、心の奥のある部分を、しーんとさせてくれる。
泣けるとか、そういう一言では片づけられない。
涙の前に、心がすーっと澄んでいくのを覚えたのだ。

事故で、右腕の感覚と、言葉にならない「考える」力だけが残された夫に、妻は、毎日やってきて、右腕に語りかける。
夫の右腕に、指で文字を書くことで。
やがてその指文字は、妻が以前生業にしていたピアノに取って代わる。
妻は、夫の右腕でピアノを弾くのだ。
やがて、夫は、妻の音のない演奏から何かを感じ取っていき・・
というようなストーリー。
全編を通して、描写の一つ一つが繊細で、美しい。
そしてラストの夫の決意に、私は深く頭を垂れる。
これこそが美しい、自己犠牲の物語だと。
タイトルは失はれる物語だけど、私の中ではきっと失われることのない物語になるだろう。

同録されている短編の数々も、それぞれに印象的なお話。
短編集として価値高し。オススメします。

テーマ : 乙一
ジャンル : 本・雑誌

結婚できない男

今期のクールで一番面白そうなのは、これ。
「結婚できない男」。
ああいう、ルックスはいいのに、偏屈で、口が悪くて・・って役をマジメにやると、阿部寛さんは、最高に面白い。
尾崎将也さんの脚本も、偏屈で女に持てない40男をリアルに描き出してて、「いるいる、こういうヤツ」「絶対、恋愛したくない」と思わせる辺り、うまいよねぇ。
コメディって、リアル感とすっ飛び感の割合が難しい。
自分の周りにいそうなヤツを、ちょこっとデフォルメして描き出すか、
いそうにないけど、みてるだけでおもしろい!というキャラを作り上げるか、
どっちかなのねぇ。
このドラマは前者で、とてもよくできてると思う。
それに引き替え、日テレとTBSのコメディはねぇ・・
コメディエンヌたちの魅力、もっと引き出して欲しいものです。

テーマ : 結婚できない男
ジャンル : テレビ・ラジオ

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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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