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悪人

芥川賞受賞作家・吉田修一さんの話題作。
朝日新聞に連載されていたのに、その朝日を購読してるのに、読んでませんでした。
バカだなあ、と思いつつ、一方で、イヤ、これは毎日チビチビ読んでられませんよと思ったりもする。
最初、なんか重苦しそうな話だと思ってしまったのよね。
決して軽い話ではないです。
でも、ぐいぐい引き込まれ、結局かなりの分厚さがあるのに、一日で読んじゃいました。

福岡で保険外交の仕事をしている若い女・佳乃が殺され、峠に遺棄されているのが発見された。
彼女は、恋人の大学生とデートすると言って、夕食後に友人と別れ、そのまま帰らぬ人となってしまったのだ。
当然、彼女と会っていたという大学生に注目が集まるが、彼は姿を消していた。
その一方で、警察は、佳乃が出会い系サイトで出会った男たちも追っていた。
その中の一人である祐一は、幼い頃に母親にフェリー乗り場に捨てられ、現在では病気がちの祖父母と、老人ばかりが住まう漁村で暮らしている。
ぱっと見は格好のいい祐一だが、言葉数は極端に少なく、人とうまくコミュニケーションが取れない。
風俗の女に優しくされたら、その言葉を頭から信じてしまうようなところもあった。
祐一のところにも警察が尋ねてくる。
しかし、祖母や近所の老婆が祐一のアリバイを証言してくれたことによって、捜査の網から逃れた。
しかし、祐一の心は晴れない。そんなとき、かつて出会い系サイトでメールの交換をしたことのある、紳士服の量販店に勤める光代と会い、祐一は初めて幸せを感じる。
だが、おりしも大学生が見つかり、彼の供述から、警察は祐一に目を向けた。
そして、デート中、祐一は自分が佳乃を殺したことを打ち明けるが、光代の言葉は意外なものだった。
二人は逃避行を続け、追いつめられていく。
警察官に踏み込まれる直前、祐一が取った行動とは・・

表面だけ見ると、どうしようもない人間ばかりが登場するような気がする。
そもそも、金持ちの息子だという大学生に熱を上げ、彼とつきあっているような嘘をつきつつ、出会い系サイトで男を引っかける佳乃は、殺される原因を自分で作っていたようなものだし、そんな女に引っかかる祐一は、一見、頭の中に性欲しかないのかと思うような、コミュニケーション不全の若者だし、地味でまじめな光代も、正月やクリスマスイブも共に過ごす恋人がおらず、孤独感のあまりショッピングセンターのトイレで泣き出すような寂しい女である。
しかし、読み進むうちに、祐一も、光代も、キャラクターに別の光が当てられ、そこから浮かび上がる人間像は切なく、共感を呼ぶ。
誰が悪人で、誰が善人なのか。
生きている人間は、そんな単純な善悪で割り切れるものではないというのが実感できる。
愚かで金に貪欲な佳乃を、たとえ世間がどういおうと全身全霊をかけて愛する父親や、
詐欺商法に引っかかってしまい、それに日々おびえながらも、最後には自分の尊厳をかけて立ち上がる祐一の祖母、容疑者となった大学生のあまりの薄っぺらさに呆れ、佳乃の父親の捨て身の行動を見たことによって、生と死を実感する大学生の友人など、周囲の人間の生き様が、秀逸な描写でせまってくる。
そして、最後に光代が語る言葉。
痛ましくも、切なくも・・泣かされます。
うーん、2007年上半期に読んだ本の中で、五本の指に入る佳作。
人がただ生きる、たったそれだけの難しさをしみじみと考えさせてくれます。
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侮れない、引き込まれるティーンズ向け小説「獣の奏者」

ファンタジー嫌いの上に、ブームになってる本はほとぼりが冷めてから読むというへそ曲がり故に、あれほど人気の「ハリポタ」もノー興味の私。
魔法使いだの、魔法使いの学校だのいわれてもねぇ、いい大人がのれますかい?
(と、ファンが聞いたらプンプンなことを言う私。たしか、ガメラファンの前で、「たかが亀の映画」と言い切ってしらけさせた前歴有り(^^;))
そんな私が、騙されたつもりで読んでみた、この本↓

やられました。はい、素直に認めます。

主人公は、母親を殺された少女・エリン。
彼女の母は、他の部族とは決して交わらない霧の民の一族。
エリンの父と恋に落ち、仲間を家族を捨てた過去を持つ。
エリン達が済む王国では、闘蛇と呼ばれる妖獣を、武器として飼っていた。
エリンの母は、女ながらに闘蛇の獣医師として勤めていたのだが、ある日、原因不明の病が闘蛇を襲い、彼女が診ていた獣はすべて死んでしまった。
その罪をかぶって、エリンの母はむごい死を遂げる。
母を助けるどころか、母と自分を「霧の民」として冷たい目で見ていた祖父とは暮らせず、エリンは十歳にして流浪の身となった。
そして彼女は蜂飼いの老人に救われるのだが、数奇な運命は彼女を平和な暮らしに安住させず、新たな困難へと立ち向かわせた・・

うーん、面白い。大人にも人気があるのが解る。
ティーンズ向け小説だから、読みやすいというのもあるけど、かといって、決して子供だましではない。
異世界を描くファンタジーは、いわば、まったくこの世のとは違う世界を、丸ごと作り上げなければならないわけで(例えば、時間をどう数えるのか、何を主食として生きているのか、政治は誰が司っているのか、国土の状態は、等など数え上げればきりがない)、その作り上げられた世界が嘘くさければ(ほんとは嘘なんだけど)、ストーリーに入り込めない。
その点、この著者は強みがある。
文化人類学者で、アボリジニの研究をしていたという。
しかも、現役の大学教授。
フィールドワークに裏打ちされた、虚構の世界は、現実感に満ちている。
どこか、大好きな「十二国紀」を彷彿とさせるなあ。
(しかし、十二国紀の続きといつ出るんですかよ。小野さん、講談社さん、頼みまっせー)
こりゃ、第2巻も読まなくてはなりません。
しかし、子供向けの本で1500円はちょっとなぁ。
子供の読書離れを防ぎたいなら、この辺の価格設定は何とか考えてもらいたいもの。
もちろん、図書館を利用すればいいんだろうけど、人気作はなかなか手に入らないし、個人が買う方が、出版業界だって儲かるってもんでしょ。
ぜひ早めに文庫にしてくれることを祈ります。

テーマ : **おすすめbook!!**
ジャンル : 本・雑誌

バカな犬でもカワイイ~~マーリー/世界一おバカな犬が教えてくれたこと~~

世の中には、犬好きと、猫好きと、犬と猫両方が好きな人がいますが、私は断然犬派。
「セカチュー」や「きみあい」や「タイタニック」ではてーんで泣けないけど、南極物語はオープニングだけで泣ける。
盲導犬など、けなげな犬ものは100%、鼻の奥がつんとしたり、時には滂沱の涙が。
犬を主人公にした小説や映画にはものすごーく評価が甘くなります。
強盗犯のニュースには「ひどいヤツがいるなあ」くらいだけど、犬を虐待していた悪人のニュースには殺意を覚えます。
もしも、あなたもそんな犬好きだったら、この本のことをすごく好きになるはず。
というより、この本の主人公、世紀のバカ犬・マーリーのことを。

ラブラドールレトリバーと言えば、盲導犬としても知られる賢犬。
穏やかで忠誠心が強くて、おとなしくて、利口な犬、それがラブのイメージですよね。
ところが、ところが、このマーリーと来たら、主人公が「殺してやろうか」と日々思ってしまうくらいのバカ犬。
45キロの巨体で、相手が誰であろうと飛びつき、相手の顔をなめまくって唾液だらけにする。
もちろん、飼い主の言うことなど聞かず、散歩中は飼い主を引きずって突進する。
ま、このあたりはどこのバカ犬でもしそうなことですが(うちの実家の今は亡きバカ犬・ミッキーも、いきなり方向転換して突進し、私を引きずり倒したこと数知れず)、マーリーは更に破天荒。
一人にされることがキライで、留守にすると必ず家の中が「強盗に入られたよりひどい」状態になる。
金属製のケージも破壊するほどに暴れるし、特に雷恐怖症で、その時には自分の体が血まみれになるくらい暴れたりする。
リードは食いちぎられ、飼い主はやむを得ず、金属チェーンをリードにしている。
訓練所からもドロップアウトというか退学処分?になり、飼い主を途方に暮れさせる。
何たって、マーリーはバカ犬役で映画に出たくらいだから(もちろん縁起じゃなく、いつもの行動を繰り返して)、そのバカ犬っぷりは相当なもの。
でも、飼い主にとっては、愛すべき最高の犬。
時には殺意を覚えたり、こんな犬は知りませんという顔をしてみたりするけれど、やっぱりマーリーがいないと人生が味気ない、そんな気にさせる犬なのだ。
とはいえ、この犬、日本では、少なくとも住宅地では到底飼えませんぜ。
どんなに暴れても、主人公達が何とか飼い続けていられたのは、マーリーが駆け回れるだけの庭があるアメリカの家ならでは。
私も密かにラブやゴールデンリトリーバーを飼いたい野望があるのだけど、さすがに、マーリーはね。
ちなみに、ラブにはアメリカ系とイギリス系があり、飼いやすいのは圧倒的にイギリス系だそうです。
体格から性格から、全然違うらしい。
当たりはずれの大きいラブ、飼うには勇気と慎重な調査と、万一バカ犬にあたっても何とかなる忍耐心と広い庭が必要なようで。
私の野望は叶いそうにありませんわね。
でも、どんなにバカでも犬はカワイイ。
結局、犬好きはこうなるのです。
未だに、飼っていたバカ犬が恋しいんですもんね。

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ジャンル : 本・雑誌

ときには不思議テイストの小説

極めて現実的な人間なので、ファンタジーとか幻想小説、SF小説の類にはあまり手を出さない。
パラレルワールド、なんてテーマになるとおおいにこんぐらがり、自分の頭の悪さを露呈してしまったりするから。
それに、舞台が現実と離れていればいるほど、物語にのめり込めない性質らしい。
ところが、ここのところ、現実世界とずいぶん乖離した小説を続けて2冊読んだ。
舞台は現在の日本、登場人物も「ちょっと変わってるけど近くにいそうな人」だったりもしたから枠組みは取っつきやすかったのかもしれないけれど、両方とも、かなり不思議なお話なのだった。


この作者は、「麦踏みクーツェ」という作品で注目された気鋭の作家らしいのだけど、私は初見。
物語は、不思議な湖の側で始まる。
湖の周りに済む家族の中には、一家で一人、眠り続ける人間がいる。
主人公の2番目の兄がそれだ。
そして、湖はときに滾々とあふれ出し、眠り続ける兄がさまざまなことを語る。
湖は時が来るとまた元の姿に戻り、あふれついたさまざまなものを村人は拾い集める。
そんな暮らしの中に、ある時旅の商人が訪れ・・ 湖の暮らしは一変していく。
というようなお話。
寓話かしらん、と頭をひねっている内、次の章では、舞台が日本になる。
主人公は無口なタクシー運転手で、そのまた次の章では、長野の松本とNYに済むそれぞれの夫婦が主人公に変わる。
聞くだに風変わりな小説でしょう?
ストーリーの枠組みだけを説明しても、この小説の魅力はちっとも伝わらないし、そもそも、説明なんか必要のない小説と言えるかもしれない。
だから書評もみんな、どこか抽象的。
ただ、ファンタジーやら幻想小説やらが嫌いな私が、ぐいぐい引き込まれてしまった物語世界は、やっぱり一読の価値があるんじゃないかと思ったりする。
とまあ、こんな紹介の仕方しかできないわけですわね。
何だろう、食べたことのない、食用だと思われない花を口に含んだら、今まで知らなかった香気を感じた・・というようなことをイメージしてもらうと近いやもしれません。


こちらは、「りかさん」や、「西の魔女が死んだ」などがお気に入りの作家です。
しかし、その2作が、十代の少女を主人公にした、クラシックな香りの漂う少女小説みたいな趣だったのに比べ、こちらはもっと複雑で、女や大人や人間の「生」みたいなものが濃厚に描かれてます。
しかも、設定が奇抜。
妙齢の女性である?主人公は、叔母が亡くなった時、マンションと一緒に「ぬか床」を譲り受けることに。
ところが、このぬか床から出てくるのは、つけ込んだキュウリやなすびだけではなかった。
ある時、入れてもいない卵に気づいた日から、異変は始まり・・
その卵はひとりの少年を生み出した。
早くになくなったかつての同級生にそっくりだというので、彼に心からの友情を捧げていた幼なじみの男に引き取られていくのだが、またも卵が現れ、今度は性格の悪い女が現れ・・
一体このぬか床はなんなのだ?
主人公は亡き叔母の日記や、一人生き残っている叔母の言葉を通して、自分の両親もぬか床にまつわる事件で命を落としたことを知る。
更に変質を続けるぬか床をどうすればいいのか、主人公は「男性であることをやめ、かと言って女性にもなりたくない」元男性と共に、ぬか床の故郷である島に向かう・・
って、これまた奇妙きてれつなお話でしょう?
こんな紹介されて読みたい人がいるんだろうか?
いえ、私は読みたかったんですけどさ。
だって、ぬか床ですよ、ぬか床。
感触も匂いも最高にリアルなものが、不思議なものに変質しているのにはとっても興味が湧いて。
さすがに、私のような不思議小説嫌いには、読むのに時間がかかりましたが、読後感は悪くなく、ことに、島の描写やぬか床発祥のいわれには、「生」の深さ、不思議さを深く感じさせられました。

不思議テイスト好きな方には、文句なく楽しめる2作だと思います。おすすめ。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

さすが奥田英朗~家日和~

ご存じ精神科医の「伊良部」シリーズで楽しませてくれる奥田英朗さんの新作。
伊良部シリーズじゃないけど、シニカルな中に光るユーモアが、さすがです。

ネットオークションにはまって、夫の大事なものまで内緒で売り払っちゃう主婦とか、
会社が倒産して周囲からは同乗されるけど、本人は「アットホームダディ」が気に入っちゃうサラリーマンとか、
すぐに起業したがる夫が窮地に陥ると、才能が光り出すイラストレーターとか、
ありそうでなさそうで、ちょっと身につまされたりするお話が満載。
こういうの、上手いんだよなー、奥田さん。
一番笑えたのが、「妻と玄米ご飯」。
夫が一躍売れっ子作家になった妻が、ロハスに目覚めて、家族に玄米ご飯を強いるのだけど、これが不評で。
でも、妻はどこまでもロハス生活に邁進していく。
夫は、玄米の良さを認めつつ、「シャネルにはまるよりマシ」と思ったりしつつ、でも、大阪弁で言うところの、「おちょくり(からかい)」たくって仕方がない。
この作家が、奥田さんを彷彿とさせるユーモア作家。
ロハスにはまるような人々を茶化すのが本業?なのだから。
でも、妻や妻のロハス仲間を敵に回すわけにはいかない。
いや、でもやっぱり書きたい・・
そのもやもや感がとってもリアル。
解る解る、その気持ち。
私も、たかだかブログですら、おちょくれるのは夫だけですから。

個人的には「アットホームダディ」になってくれる主人公が、とっても気に入りました。
欲しい、あんな夫。
どんな夫かは、読んでみて↓

プロフィール

dancingwolf

Author:dancingwolf
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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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