スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「悪」について向かい合うこと~~「楽園」

愛する宮部みゆきさんの新作。
もちろん、速攻で買って、帰省している間に読みふけりました。
寝る前、起きた時、トイレまで持ち込んで(^^;)、完読。
だって、手放せなくなるくらい夢中にさせられるんだもん。


今回の主人公は、「模倣犯」を読んだ方なら誰でもご存じのルポライター・前畑滋子。
あの忌まわしい連続殺人事件から9年。
事件に深く関わることになった滋子だが、事件のあまりの悲惨さに毒されたのか、その顛末はおろか、「書く」仕事もできなくなっていた。
やっとフリーペーパーの編集部の一員としてライター仕事に復帰した滋子の元を、一人の女が訪ねてきた。
彼女は、自分の死んだ息子に「超能力」があったという。
息子が交通事故死した後に、彼が書き残した殺人事件が発覚したというのだ。
それは、両親が非行娘を手にかけて自宅の床下に埋め、十六年もの長きにわたってそれを隠し続けていたというものだった。
果たして死んだ息子の能力は本物なのか、
両親が娘を殺したのは何故なのか、
半信半疑で、ただ母親のためを思って調べ始めた滋子だが、やがて事件の深層にある「悪」に気づき始めた・・

正直言って、最初帯を読んだ時には惹かれなかったんです、この作品。
モチーフが超能力かよ、って。
確かに宮部さんの作品には、「龍は眠る」とか「魔術はささやく」とか「鳩笛草」とか「蒲生邸殺人事件」とか、サイコパス関係の名作が沢山ありますが、でも「模倣犯」はまったく現実世界の現実的な殺人事件だったし、そこに登場しキーパーソンとなった前畑滋子が、今度は超能力ものにも出てくるってのはどーよ?と思ったわけですね。

が、そんな懸念はいっぺんに吹っ飛びました。
滋子は超能力なんか信じていなかったし、出来る限り信じようともしなかった。
そして、息子のことを「超能力者では」という母親自身、それを確信していたわけではなく、ただ、彼女はいなくなってしまった息子のことを知りたいだけだった。
それなのに、事件は意外な方向に転がっていく。
ものが飛んだり、人を催眠術にかけたり、タイムトリップしたりはナシ。
滋子と、母親と、殺された非行少女と、その妹の人間関係が丁寧に描かれ、全然違和感がありません。
そして、今回もにじみ出てくるのが、ただの生身の人間が立ち向かうことの出来ないような「悪」。
「模倣犯」で、犯人達は何故あんなむごい殺人事件を起こしたのかは、はっきりと説明されていません。
だって、そんな「悪」にわかりやすい解説は出来ないからです。
ワイドショーが簡単に使う「心の闇」、そんな単純なものではない、奥深く、戻ってこられそうにもない闇に満ちた「悪」・・
金とか、嫉妬とか愛欲とか、そうした一言で説明される明快な動機をもたないが故に、つかみ所がなく防ぐこともままならない「悪」・・
今回も宮部さんは、「超能力」をモチーフにして、そのテーマに果敢に挑んでます。
その「悪」の本質は何か。
わからないながら、「悪」に対峙したものたちはどうすればいいのか。
切なくも苦しい選択をした人々の叫びが聞こえてきそうです。

もちろん、ストーリー構成といい、キャラクター造形といい、流石に手練れ。
ぐいぐい引き込まれて前後編、2冊読んじゃいますよ、きっと。
スポンサーサイト

テーマ : オススメの本
ジャンル : 本・雑誌

上方落語の魅力~~たまちゃんハウス~~

大阪の我が実家に、夫と共に帰省。
落語好きの夫が、ぜひにも上方落語を聞きに行きたいというので、「田辺寄席」という、地域で長く続けられている寄席を見に行った。
公民館の体育館を借りて行われているらしく、ごく簡素な感じの、来ている人も常連さんばかりのようだ。
ちょっとした漫才を見ても大笑いする、よく言えば純朴な、悪く言えば「ヤスイ」観客である夫とは違って、私は「キツイ」客である。
漫才のバトルものなんかを見てても、決して笑わない自信(?)がある。
実家の法事などにつきあってくれる夫への義理で行ったようなもので、退屈するかもしれないと思っていたくらいだったのだが、予想外に上方落語は面白かった。
夫は体を二つ折りにして笑い(畳の部屋だったらまさしく笑い転げていたに違いない)、私もつい声を上げて笑った。
そう言えば、大阪に住んでいた頃は、米朝や今は亡き枝雀の落語を聞きに行ったものだった。
寄席に足を運ぶことが少なくとも、テレビなどでも折々に放送があって、落語は生活に根ざしていたという感じがする。
東京に来てからは、落語とはすっかり縁遠くなってしまったが。
なんだか上方の落語に比べて、「ギャグ」のような所作が多い気がして。
(これは生粋の「大阪人」である私の偏見かもしれないけど)
上方落語は、やっぱり言葉がまろやかでいい。
特にしっぽ、語尾がふんわりしていて、それでもっておっちょこちょいだのアホだのの「与太者」を「与太」らしく演じられるのである。
上方落語に登場するアホは、ホンマに可愛らしいなあ、と思う。
このあたりの感覚は、やはり関西人ならではのものかもしれない。
次回また夫と一緒に帰省したら、ぜひ寄席に行ってみよう。
さすが伝統芸というものは、生半可な「キツイ」客など簡単に転がしてしまうものである。

さて、それほど上方落語に興味のない人でも、きっと面白く感じる、ちょっと寄席にでも行ってみたいなと思わせるコミックスがある。

作者の逢坂みえこさんは、かつて「永遠の野原」という名作で、私のなけなしの感受性をつかみ取った人である。
「永遠の野原」を語り出したら長くなるので別の機会に譲るとして、こちらの作品もよろしい。
逢坂さん独特の、映画のカット割りにも似たコマ割り、
確かな画力、
そして、何より上方落語への愛情がふんだんに込められ、
そこに、落語好きでなくてもはまるキャラクター造形やユーモアのセンスがこれでもかというくらいにちりばめられ。
落語がテーマのドラマや映画が人気とはいうものの、漫画にするにはなかなか難しい。
あの「間」が表現できる漫画家さんは決して多くないと思う。
落語家の家に生まれながら、落語に全然興味のない女子大生・たま子と、個性的な内弟子達をめぐるストーリーを楽しみながら、落語のおもしろさに触れることもできる。
私は、パチンコ依存症の夫婦の元に生まれ、たま子の父に弟子入りすることになった「白春」という少年のキャラクターが大好きというより愛しく、またも逢坂さんに「くうう」と言わされてしまっているのである。
読んで損なし。
って言うか、読むべし、と言いたい佳作です。はい。

テーマ : まんが
ジャンル : 本・雑誌

やはり、文豪は文豪

最近ようやく、ファンタジー嫌いから脱却しかかっている私。
面白い作品、刺激される小説には、ジャンルは関係ないのね。
取っつきやすさや好みは影響するにしても。
多分、以前の私なら読まなかっただろう作品がこちら↓

ま、簡単に言うと、源平の合戦で、祖母の尼御前に抱きかかえられて海に沈んだ安徳天皇(平清盛の孫で、まだ幼少ながら平家の意向で帝位を継いだ、あの悲劇の天皇ですね)が、実は生きていて・・と、ここまでは平家の落人伝説の中ではごくごくポピュラーに言い伝えられてますが、この作品は更にファンタジック。
安徳天皇は、秘法でもって球体の中に入り、生きながらえているのです。
そして、その球体と安徳天皇を守護するために、天皇に使えるものが考えついたのは、時の源氏の統領であり、これまた悲劇の刃に倒れる源実朝に、その保護を命じることでした。
実朝はご存じの通り、酒色、女色に溺れ、最後には甥である僧・公暁に打たれて命を落とした源氏最後の将軍で、政務はからっきしだったけど、歌の才能だけは後世に名を残すものがあったとされてます。
んが、この作品に登場する実朝は、球体に収まった安徳天皇を何とか守護し奉ろうとする中心であり、心優しい人物なのでした。
結局、安徳天皇と球体は、実朝の死後海を渡り、遙か中国の王国の王子にひろわれ・・と、どんどんスケールが広がっていきます。
滅亡寸前の王国の王子との子供らしい友情が、涙腺を絞ったりして。
これはこれでさすがに評価の高い小説なのですが、後書きを読んで、首をひねってしまった私。
作者は、「この小説は太宰治の『右大臣実朝』なくしては出来なかった」と、最大限の敬意を払っているのですが、待てよ・・私、結構太宰治が好きだったのに、『右大臣実朝』は読んでない!
なんと言うことでしょう。
あわてて図書館へ駆け込み(本屋に置いてあったのは『斜陽』とか『人間失格』とか『走れメロス』とかばっかりで)、あわててページを繰りましたよ。

そして、いや、まあ、もう、なんというのでしょうか。
さすが文豪。
美しい小説です。優れた小説は美しい、と常々私は思ってるのですが、これはまさにそう。
書評によっては、太宰治の一連の傑作の中には推さないというものもあります。
その評も良く分かるところはあるけれど、いや、それにしたって、やっぱり脱帽です。
鎌倉幕府の行事や実朝の細かな行動などを記した『吾妻鏡』を元に、お付きの者が実朝の心を推し量る体で書かれていて、実朝の言葉はごくわずか「ソウイウモノデス」、「ソレダケガイキテイクミチデス』などと挿入されているだけなのに、その一言のカタカナの一文で、実朝の抱える悲哀、優しさ、滅びゆくものの悟りが胸にしみいります。
うむぅ、このあたりが、ただの流行作家とは違う、歴史を経ても読み継がれる文豪の文豪たるゆえんなんですね。
改めて読み直して、続いて何度も読んだはずの『斜陽』や『人間失格』も読み返しています。
今読み返してもちっとも古臭くない。
文学と呼ばれるものが、先人が残してくれたお宝だと実感します。
これを種本に、あの作品を書いた宇月原さんもエライ!
続いてこれも読もうと思ってます↓

ああ、読みたいものがいっぱい。時間がない。でも、幸せ。

テーマ : **本の紹介**
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

dancingwolf

Author:dancingwolf
FC2ブログへようこそ!
ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。