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切なく愛しい青春小説~みなさんさようなら~

「青春小説」って、ありがちですよねー。
好きだけど。
かつて、若かりし日の自分を思い浮かべながら読む分、過去の思い出が読後感にプラスされたりして。
誰だって多分好きなジャンルなんだろうな。

で、この「みなさん、さようなら」。
最初は奇妙な主人公が出てきたな、と思うわけです。
主人公の悟君は、小学校を卒業したら、住んでる団地から一歩も外へ出なくなってしまった。
団地の外にある中学校には一日たりとも通わず、いわば「団地引きこもり」状態。
引きこもったとはいえ、団地内のコミュニケーションセンターにある本を読んだり、自分なりの勉強もし、空手の達人大山倍達に私淑し、彼が行ったとされるさまざまなトレーニングを積む・・という活動的な引きこもり。
やっぱり、変。
「パトロール」と称して、団地内に住む小学時代の同級生の家を調べて回らないと気が済まない。
そのうちに明かりはついているだろうか、同級生は帰っているだろうか、夜警団よろしく毎日毎日団地内を歩き回り、時には郵便受けから中を覗いたりもする。
当然、「おかしいよ、あの子」と非難されることもある。
それでも、離婚して女手一つで悟君を育てている母親のヒーさんも、
コミュニケーションセンターの職員も、
やがて悟君の「師匠」となるケーキ屋のオジサンも、
そして同級生自体が、そんな悟君をどこかで受け止めている。
中学校を卒業する年になっても、当然悟君は団地を出ず、団地内で働いて暮らして行くべく、団地内のケーキ屋さんに就職する。
そこでケーキ作りを学びながら、体を鍛えるトレーニングは日々欠かさず(親指一本腕立て伏せとか、とんでもないトレーニングなんだ、これが)、もちろんパトロールも続けている。
お年頃の彼にはやがて、ずっと団地で共に育ってきた女の子の恋人もでき、「性春」も謳歌する。
けれど、同級生が成長し外の世界へ出ていくと共に、団地からは櫛が抜けるように人がいなくなっていく。
一人、三人、五人、十人・・毎年毎年、出ていく同級生やその家族を見送る悟君。
いいんだろうか、それで。
当然の事ながら、団地から一歩も出ない悟君と彼女との間には亀裂が入っていく。
そうまでして団地に引きこもる理由が明らかにされたとき、それまで「ちょっと、いや、かなり変な男の子」だった悟君が、とても切なく、愛しくなる。
彼の奇矯な振る舞いが、「ああ、そうだったのか」と腑に落ちた瞬間から、悟君を愛せない人はいないだろう。

著者は、この作品でパビルス新人賞を受賞し、次の作品で日本ファンタジーノベル大賞も受賞するという大器。
「青春小説」というジャンルの第一人者になりそうな予感がする。
スポーツに打ち込む純な少年、ってのも美しいけど、胸の奥を細い指でスリスリされるこの感覚こそ、グローイングアップストーリーには欠かせませんぞ。
年の瀬、忙しい日に読んだら手放せなくなるけど、それでもいいやーって言う人は、即Amazonへ。
しかし、うまいよ、この人。ホント。
小説の世界には恐るべき新人作家がいっぱい。
この先も楽しませて頂けそうで、期待大です。

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テーマ : 最近読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

誘う本、敬遠させる本

恥ずかしながら私、日本の古典芸能にはとんと疎く・・
自分から進んでライブで見たり聞いたりしたのって、落語くらい。
雅楽?結婚式場で流れてるのしか聞いたことない。
歌舞伎?高校生の時、学校から強制的に見に行かされたな。
狂言?これも同じく。
文楽?旅行先の郷土芸能館みたいなところで見たけど・・ほとんど寝てました、はい。
中でも、文楽はほとんど興味の外。
歌舞伎なら、歌舞伎役者がTCドラマに出たりしていたし、ちょこっとは行ってみたいなと思わないでもないけど。
文楽って、なんか不気味な人形がのたくってるだけだもんねぇ・・
なんて、ファンが聞いたら怒髪天を衝くような感想しかなかった私。
もちろん、文楽なんかどうでもよくって、三浦しをんさんの文章が読みたくって借りたのだ。
でも、意外や意外、読み終えると、「今度文楽見に行ってみようかしらん?」と思っている自分に気づく。
うむう、これは三浦しをんマジック?!
この本の魅力は、ひとつには、もちろん三浦しをんさん独特の軽快でユーモラスな文章がある。
もう一つは、古典の名作劇が「おお、そんな話だったのか」と気づかされること。
(いや、私がもの知らずなだけで、みんなとっくに知ってることなのかもしれないけど)
「仮名手本忠臣蔵」の登場人物、塩冶判官が浅野内匠頭だって事は知ってたけど、おかる、勘平ってのは、何者じゃ?と首をひねっていた私、やっと解りましたよ、どういう人物で何をしでかしたのか。
「桂川連理柵」も、「女殺油地獄」も、ほーほー、そう言う話だったのねと、初めて合点。
今さら聞けない固定の名作をこんなところで、しっかり現代語訳(今、この平成時点のね)してもらえるとは、いやあ、ありがたや、ありがたや。
古典にありがちな「え?それはいったいどういう事?」という不思議な筋立てや、登場人物の妙なキャラクターにも、一々しをんさんのつっこみが入っているので、こちらも読んでいて「そうだよねぇ」と感情移入しやすい。
イヤイヤ、こりゃあ、めっけもんですよ。
文楽に興味がなくても、中盤の作品解説だけで読む価値有り。
おまけに、文楽が上方で栄えたものと知って、親近感が大いに湧きました。
やっぱ、古典芸能は上方だね、エッヘン(なぜ自分が威張るのかわかんないが)。


「あやつられ文学鑑賞」が、ホントに操られて文楽を見に行きそうな「誘い本」だとすると、こちらは正反対↓

作者は、映画化された「てなもんや商社」でブレークした谷崎さん。
中国人相手のビジネスの七転八倒ぶりを抱腹絶倒の語り口で描いた作品で、思い切り笑わせてもらったものです。
で、その本から20年後、著者は中国は北京大学に留学してた。
まあ、なんと懲りない人なんでしょ。
あれだけ大変な仕事をしていて、またいくか、中国へ?
しかも、今度は仕事ではなく留学(遊学)で。
私は二度ほど仕事で中国へ行き、「絶対個人旅行はしたくない」という気にさせられた。
もちろん、出来るだけ仕事でだって行きたかない。
両旅行とも、かなりのお大尽待遇だったけど、それでもうんざり。
チベットに行くときは、中国国内を旅行するのが嫌さに、わざわざネパールからヒマラヤを越えたくらいだ。
ま、「文楽」と同じくらい縁がなかったわけですわね。
で、この本を読んで・・ああ、やっぱり、今の中東と同じくらい行きたくない、と思ってしまった。ヤバサでは同じでしょ。
グアテマラの屋台で生のフルーツを買い食いするくらい(たいていの旅行者はこれで腸炎を発症する。ホームステイ先ではゾクゾクと患者が発生し、罹患率100%近かった!私は運良く当たらなかったけど)チャレンジャーな私も、中国の屋台でもの食う蛮勇はない。
本の内容は至って真面目、というか中国と日本の問題を浮かび上がらせる好著なんだけど、いかんせん、紹介されるエピソードの数々で、「中国っておもしろーい」「行ってみたい!」という人は、かなりのマゾなんじゃないかと思ったりする。
反日感情と言い、中国人の図太さと言い、偽物だらけの生活必需品と言い・・これはある種のホラーですかと言いたいくらいの恐怖が詰まってる。
つけてる電球が、突然飛び散るんですぜ。何もしてないのに。
『中国での「新製品」は「人体実験の第一号」』ってのには、背筋が凍る。
先日も、中国で子供が5人、食中毒で死んでたよなぁ。
食中毒っていうより、毒殺だと思うけど。
ぶるぶる・・私にはやっぱり中国は無理。
もちろん、中国人の良さや興味深いところもいっぱい紹介されてるけど、その『長所』も、私にはタフすぎて。
ええ、所詮ひ弱い日本人なもので。
あ、この本自体は面白いのですよ、念のため。
フラットで正直な中国観ってなかなかお目にかかれないものだし。
中国を好きになれるか、嫌いになるかのリトマス試験として読んでみるも良し、です。
でも実をいうと、中国には行きたかないが、京劇や上海雑伎団、変面なんかには興味ありあり。
文楽より見に行きたいかも・・
って、「なんだよ」と、三浦しをんさんにつっこまれるかもしれませんわ。

テーマ : 最近読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

妄想小説?~~この人と結婚するかも

例えば、合コンで出会った人、バイト先の先輩、よく行くお店の店員さん、隣の課の社員、友達の彼氏の友達・・彼らの中の誰かと「あ、この人と結婚するかも」って思ったことありませんか?
私はその昔ほとんど結婚願望がなかったので、「結婚するかも」とは思わなかったけど、「恋人になるかも」とか思ったことはあったなあ。
たいていは進展しないうちに自然消滅したり、話してみたら全然あわないタイプだったり、「恋人になるかも」なんて予感はほとんど当たらなかったんですけどね。
あれは、恋人がいないときの欲求不満のなせる技だったのかしらん?
それとも、女性特有の妄想?
私だけでなく、そして、この物語の主人公だけでなく、結構多くの人がこの手の妄想というか、当たらない予感というかを抱いたことがあるはず。
この物語の主人公のように頻繁じゃなくてもね。
何しろ主人公の節ちゃんは、スーパーで同じチーズを選ぼうとした男(もちろんまったく未知の、その日その場であっただけのひと)に、「この人と結婚するかも」なんて思ってしまう女性なので。
小さな美術館の学芸員で、しっかり者の彼女が心の中で抱く、ささやかと言えばささやか、大胆と言えば大胆な妄想。
でも実際には、そう「思う」だけで、なんのアクションも起こさないし、むしろそんな妄想を抱いた人から遠ざかってしまう。
何ともまあ、不器用。
ああ、でも、この手の人はいるなあ、自分の周りに。
「負け犬」だのなんだの呼ばれる独身女性のかなり多くが、彼女のように予感を現実化させないタイプなんじゃなかろうか。
自分もかなりそっち側の人間だったなあと思えて、何だか懐かしく読んだ。

もう一本収録されている「ケイタリング・ドライブ」は、同じく妄想癖のある男性版。
なるほど、男と女はこんな風に妄想も違うのねぇと、興味深い。
そして両作に共通しているのが、何とも「おいしそうな小説」だと言うこと。
節ちゃんはかなりきちんと健康的なご飯を作る人だし、
男性主人公のサトルは料理研究家だし。
ひとつひとつの料理の描写が食欲をそそります。
作者の中島たい子さんは、ちゃんと料理をする人なんだろうなあ。
食いしん坊の人は、それだけでも一読の価値ありです。

テーマ : 感想
ジャンル : 本・雑誌

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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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