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「告白」すると……ミステリに望むもの

今、ものすごく売れてるらしい、ミステリー。
やっと入手したので、早速読んでみました。

とある中学校の終業式。
クラス担任の女教師が、「今月いっぱいで教師を辞めることにした」と別れの挨拶を始めた。
彼女が教師を辞めるのは、ある事件があったからだった。
そして、その日、別れの挨拶をしながら、彼女は生徒達に告げた。
「私の子供を殺した犯人がこの中にいる」と……

巧みです。導入部が凄く上手い。
おかげで、次々とページをめくってしまいました。
ふむう、売れるのも当然、ですね。
もともと第一章の、先生の告発部分だけで、とあるミステリーの新人賞を受賞し、その後の生徒達を描いた部分を加えて、一冊の本にしたそうです。
道理で一章だけで完成されている感じ。
「終業式での先生の告発」という道具立ては秀逸でした。
すらっと読み終えられましたし。

でも、多分、読み直す気にはならないだろうなあ。
中学生くらいからミステリが大好きで、クリスティから始まり、ディーヴァーにいたるまで、いろいろ読んできましたが、どーもここのところ、ミステリに食指が動かない。
もちろん、読んではいるけど、何度も読み返したいという気が起こらないのです。
作品のせいではなく。
日本のミステリやホラーは、今や世界でもトップクラスでしょう。
英語圏の作品ばかりもてはやさず、日本の作家のミステリを読んでご覧さ、と世界の皆様にお勧めしたいくらいです。(大げさ(^^;))

多分、神戸や秋葉原の連続殺傷事件などを経てしまうと、どこか、何か救いのある作品でないと、拒否反応を示してしまうのかもしれません。
私が、宮部みゆきさんやジェフリー・ディーヴァーの作品に惹かれるのは、扱われる事件がどれだけ陰惨でやりきれないものであっても、どこかに、生きていく希望や人間の強さが描かれているからだと思います。
「火車」は、私が宮部さんの最高傑作だと思っている作品ですが、これだって随分酷い事件です。
でも、登場人物の行動に、愛があり、友情が垣間見え、事件の後も、関わった人々が前を向いて生きていくのだろうという希望を感じます。
「模倣犯」にしても、「楽園」にしてもそうだし、次々と人が、しかも大量に死んでしまう「孤宿の人」には、泣かされます。
ジェフリー・ディーヴァーの人気シリーズ「リンカーン・ライムもの」の主人公、リンカーン・ライムは、考えること、話すことは出来ても、首から下は指一本動かすことが出来ないという過酷な生活を強いられながら、事件捜査にあらゆる経験、能力を活かして立ち向かいます。
決してスーパー・ヒーローではない、生身の人間としての苦しみを背負いながら生きていく彼の姿に、ストーリーテリングの巧みさだけでない、ディーヴァーの「人間に対する尊厳」を感じるのです。

ああ、また「火車」が読みたくなってきた。
ディーヴァーの新作「スリーピングドール」も。




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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

奧さまはつらいよ

「人の体って、わかりやすくできている(中略)指先、毛先、かかとといった体の末端は、きっと何かのセンサーなのだろう。乾いたり、ごわついたり、その人の心の状態をあっさりと伝えてしまう」
うんうん、そうですよね。
ここのところ、手先の荒れが気になる私ゆえ、納得。

こんな風に考えている主人公は、ネイリストで、自分の店を持っている。
でも、本人いわく「デブでブスで、雑誌に出てくるネイリストとは大違い」。
そんな彼女の店を訪れるのは、ネイルなんかしたことがないという50代以上のお客がほとんど。
彼女たちに、今までしたことがない爪のおしゃれを提案するのが楽しいという主人公は、心優しくて、働くことに誇りを持つ素敵な女性だ。
この人の、何かを諦めた、でも人生を諦めたのではない淡々とした生き方が潔くて、愛しい。

夏石鈴子さんのこの短編集↓には、そんな女性(主に奧さま)が多数登場する。

子供のいる人、いない人、働いている人、いない人……それぞれ違うけれど、立場は同じ。
みんな「奧さま」。
この本に登場する「奧さま」には、不倫している人も、韓流ドラマにはまりこむ人も、三食昼寝つきでお気楽に暮らしている人もいない。
おおよそ、日本のマスコミや男達が「気楽だよな」とひとくくりにする「主婦」とは縁遠い。
彼女たちは、ごく普通に家事をし、子供の面倒を見、時にはパートに出、PTAの会合に出席する。
おしなべて「普通の奧さま」。
なんの苦労もなさそうでいて、その心の中にはいろんなものが渦巻いている。
どうしてこんな事も出来ないのか、と我が子に絶望する母。
無神経な姑の言動に怒りをため込む嫁。
いかにもごくありきたりな状況だけれど、彼女たちの心のつぶやきに、ついつい頷いてしまう。
みんな、頑張って生きてるのよ。そうだよね、と。

作者の夏石さんは、後書きの中で、だいたいの人は苦しみ悲しみがあっても、それを外には見せない、とりあえず何かあっても、外からは普通に見せるのが人間の才能だと言っている。
だから、この物語の主人公達は、みんな「普通」なのだ。
だけど、物語の中で、彼女たちは「逆襲」する。
そうしないと、誰も主婦の言うことを聞いてくれないから。
作者にとって主婦とは「雄々しい人」で、「たった一人で自分の全てを家族に差し出している善意の人」だそうだ。
日頃は自分が「主婦」であることをあまり意識したことがない私も、この言葉に「そうだよねぇ」と、とーっても共感する。
夏石さんの、この視点が物語を貫いているから、主人公達は皆愛しい存在で、「がんばれ同士よ」と、肩など叩きたくなるのだ。

結婚してなくても、主婦でなくても、子供がいなくても、この主人公達をきっと好きになるはず。
私はしばらくぶりに、ほっこりした爽快感を味わった。
この作品に感謝しつつ、女性の皆様にお勧めします。

テーマ : オススメの本
ジャンル : 本・雑誌

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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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