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食わず嫌いのタイトル

以前から興味はありました。
でも、芥川賞作家だしなー。
芥川賞受賞作とか読むと、たいてい「へ?何でこれが芥川?」とか思い、「芥川賞ってさ、純文学ってさ…なんだかなあ」と、ため息つくのが常でした。

もひとつ食わず嫌いだった理由は、タイトル。
「わたくし率 イン 歯ー、または世界」ですぜ。
こんなタイトルの小説、読みたいと思いますか、普通?
芥川賞受賞作は「乳と卵」だけど、「ちちとらん」ですぜ。
ラン…ってあんた…

これって、素材見たらおいしそうなのに、いかにもグロテスクな形したスィーツって感じ?
食わず嫌いになってもしょうがないと思う。

でも、今回はやっとマトモ?(いや、私が保守的すぎるのかもしれないけどね)なタイトルだったので、読んでみた。
これです↓


いやあ、まともなタイトルつけてくれてよかった。
ありがとう、作者!
また「イン 歯ー」なんてつけられたら、この作品に出会うことはなかっただろうから。

美しい小説でした。一言で言えば。
斜視ゆえに(と、主人公は思っている)、同級生から残酷ないじめを受ける主人公が、同じようにいじめられている女子生徒・コジマと手紙を交わし、話をすることから、彼らの世界は交わり、どうしようもない現実の中で、何かが終焉を迎える…

「すべてを受容する弱さ」の強さを信じるコジマ。
「世間の教訓なんか嘘だ」と言い切る、いじめる側の百瀬。
どちらの中にも真実を感じ、揺れる主人公。
そこに答えはない。
いじめる側の論理は無茶苦茶だけれど、「無茶苦茶だと思ってるあんたにはわからない」と、面と向かって百瀬に言われたら、私は、彼に何を説けるだろう。
コジマに、「すべてを受容する弱さ」なんか持たなくていいんじゃないかと言ってしまうかもしれない私は、主人公に、何を告げられるだろう。

この作品が美しいのは、大の大人である私に「自分に問う」ことをさせる「哲学」が充ち満ちていることと、
少年の心象風景の描写がとても映像的で、その映像が心にしみいること。
映画が好きな人なら、自分の心の中で映画が一本できるはずだ。
そう、それが「美しい小説」の美しい小説たるゆえんだな。

新しい出会いに感謝。
次からも、とりあえず手に取れるようなタイトル、つけて欲しい!


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山本周五郎

もう一年近くもご無沙汰してしまったこのブログ。
読者がいるのやらどうなのやらわからないけれど、これからも時々、読んだ本の感想を書き続けていきます。

さて、ここのところ、通勤時間が長くなって、本でも読まなきゃやってられないという夫に勧めているのが、山本周五郎です。
え?今更?と言う人もいるでしょうが、先日も「樅の木は残った」がドラマ化されてました。
日本人の心の琴線に触れるっつうか、揺らすっつうか、かき鳴らすんですよね、山本周五郎の作品は。
昔のサムライが持っていた「人としての美学」みたいなものが心地よくて。
でも、この心地よさがわかる人って、もう少なくなっているのかも。
「何、この主人公、馬鹿みたい」って言う人とは、友達になれないだろうなあ。
友達作りのリトマス試験紙みたいなものかもしれない。

幸いなことに、夫は大喜びで周五郎を読み、私以上に感動しているようす。
やっば、リトマス試験紙かも。

ちなみに、最近「直木賞作家」より「山本周五郎賞受賞作家」がお気に入りの私。
ま、元々山本周五郎が好きなんだから、当然だけど。
(ちなみに、あんなに騒がれる直木賞の直木三十五さんの作品は読んだことがありません、恥ずかしながら。
あんまり見かけない気がするのは私だけ?
芥川賞と並び称される賞に名前がついているのに、なんか不思議)



私はこの短編集の中の、「わたくしです物語」がお気に入り。
藩内で事件や不都合がある度に、「わたくしです」と名乗って出る主人公と、彼を取り巻く人々とのすったもんだがクスッと笑えて、温かい気持ちになれます。
現代にこんな人がいたら、到底生きてはいけないんだろうけどね。

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