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償いとは何か?更正とは何か?~~心にナイフをしのばせて~~

辛く、苦しい話です。
あの神戸の少年A、「酒鬼薔薇」による残虐な事件の28年前、同様の事件が引き起こされていました。
高校に入ったばかりの15歳の少年Aによる、同級生殺害事件で、Aは被害者を47カ所も滅多刺しにしたあげく、その首を切断したのです。
そして、自らの体にも傷を付け、通りすがりの、日本刀を持った男たちにおそわれた、と偽装工作を行ったのでした。
しかし、Aの言う男たちを見たものはおらず、Aと被害者の姿しか見ていないという目撃者が現れ、やがてAは犯行を自供します。
そして、神戸の少年Aと同じく、関東医療少年院に送られ、その後、社会に復帰します。
少年法に守られ、少年Aがその後どのように生きていったのかは明らかにされません。
この本は、少年Aが主人公ではなく、Aによって息子を、兄を奪われた家族のその後を追ったものなのです。
愛する息子を失った母は、その悲劇の事件から数年間の記憶がありません。
本人はそれがなぜだか解っていません。
多分、それを思い出してしまったら生きていけなくなってしまう・・その防衛本能が記憶をかき消してしまったのでしょう。
けれど、度々失神したり、自殺未遂をはかったり、といった苦悩のはての行動が隠されていたのです。
父親は、そんな妻を守り、娘を守るために、一度たりとも家族の前で涙を見せず、歯を食いしばって生き、ついにはガンに倒れます。
妹は、事件後のマスコミや社会の奇異の目にさらされたことから、今でも人に見つめられるとパニック障害を起こしそうになるPTSDを背負っています。
被害者家族を支援するような法律も、社会の仕組みも、まだ何もなかった頃です。
家族の苦しみが二重に重かったことは想像に難くありません。
人が病気や事故ではなく殺人という無惨な死を迎えてしまうと、残された家族は思い出を語ることすらできなくなるといいます。あまりにも現実が辛すぎて。
言葉に出したら、残された家族が壊れてしまう・・そんなギリギリの、精神的な薄氷の上で暮らしていく家族が、たとえどんな嬉しいこと、楽しいことに出会おうとも、幸せを感じることはできません。
加害者の少年Aは、被害者の少年だけではなく、その家族の幸せをも殺してしまったのです。
そして、著者の調査の結果、少年Aが後に有名大学を卒業し、弁護士になり、今ではとある町の名士になっていることが明らかになります。
もちろん、少年法の意義が「少年の更生」にあることを考えれば、少年Aは見事に「更正」したことになるのでしょう。
けれど、Aは線香を上げに来ることはおろか、謝罪の手紙の一本も書いていないのです。
さらに、Aの親が払うはずだった賠償金は、1000万円のはずが40万円くらいしか支払われていません。
Aは有名私大を出るお金があったというのに。
これで少年Aは「更正」したと言えるのでしょうか?
「償い」なくして「更正」があり得るのでしょうか?
そもそも、加害少年が「更正」することは本当に喜ばしいことなのでしょうか?
命を失った少年の未来は閉ざされ、家族の幸せは永遠に戻ってこないというのに。
少年Aが、被害者を殺したのは、まっかに咲き誇るツツジ畑の中だったと言います。
残された家族は、未だにツツジを正視することができません。
けれど、少年Aが開いた弁護士事務所前に咲いていたのは真っ赤なツツジだったと言います。
少年Aの心にはまだナイフが残っているのではないか、と思うのは私だけでしょうか?

フィクションとノンフィクションの違いはありますが、こちらの作品は「償い」と「更正」について、ひとつのヒントになるかもしれません。
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テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

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少年法の問題点

少年法が今問題となっています。1997年の神戸連続殺傷事件(いわゆる酒鬼薔薇事件)で少年法がクローズアップされました。その後、2004年に長崎県で発生した十一歳の少女による同級生殺害事件も少年法改正論議に拍車をかけています。

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なんて、ショッキングな事でしょう。加害者の【更生】だけが成立したかもしれないけど、被害者への償いが完全に忘れられているんですね。言葉を失います。何かが違う、と思います。【命を奪った】という事実から目をそらして本当の【更生】はありえないのではないでしょうか。本当に重い本なんですね。

まさしくです。
自分の恐ろしい過ちに心が痛んで、苦しむ・・それを経てからでなくては、「更正」なんてあり得ないと思います。
何が何でも厳罰化を、とは思わないけど、犯した罪を真摯に反省して、残された遺族の悲しみに思いをかけるような「更正」ができるようにするには、今の少年法はあまりにも無力だと思います。
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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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