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祝直木賞&直木賞作家作品「メタボラ」

吉原手引草、直木賞を受賞しましたね。
おめでとうございます!です。
自分が面白いと思った本が評価されるのは、作者ならずとも何となく嬉しいもんです。

んで、今回の読後評は、既に直木賞を受賞し、海外でのミステリー賞にもノミネートされている、桐野夏生さんのメタボラ。
朝日新聞に連載されていたのだけど、私は読みのがしていた。
新聞小説って、ちょっと旅行に出たりすると、その後離れちゃうもんなんですよねー。
それはそれとして、今回まとめて読んでみました。

真っ暗な密林の中を、必死に逃げる若い男。
その男は、自分が何者なのか、このジャングルがどこなのか、まったく解らず、「これは夢に違いない」と思いながら、「ココニイテハイケナイ」という声だけを耳に聞いて、必死に逃げまどっていた。
そこで、フリーターの矯正塾とも言うべき場所から同じく逃げてきた、昭光というまだ18歳未満の若者に出会う。
自分が記憶喪失であることを昭光にだけは打ち明け、二人は行動を共にし始める。
男は、昭光に「ギンジ」という名前を与えられ。
二人がいたのは沖縄。
昭光は宮古島の金持ちの道楽息子で目下勘当中。
「ギンジ」はどうやら内地の人間らしい。
二人は、昭光のルックスを武器に、コンビニで知り合った若い女の部屋に転がり込むが、その生活も短期間で終わりを告げてしまう。
別々の場所で住み込みの生活を始めた。
やがて二人はそれぞれに、過去のくびきに引きずられはじめる。
だんだんと思い出されてくる「ギンジ」の痛ましい過去がそれに拍車をかける。
そして、ついにそれぞれの沖縄での生活が破綻を迎え・・

分厚いです。さすが一年連載の新聞小説。
でも、一気に読める。引き込まれるのですよ。
「ギンジ」と「昭光」の語りに。
ことに、昭光の宮古弁は、そのキャラクターとも相まって、宮古の太陽のように明るい。
対する「ギンジ」の言葉の暗いこと、しめっていること。
台詞のひとつひとつが対照的で、多分、これも作者のねらいなんだろうな。
「ギンジ」の過去が記憶の中から消してしまいたいくらいのものだったことを考えても、無理はないけど。

ここのところ数作桐野作品を読んできて思うのは、絶望を描くのが秀逸ということだ。
例えば「OUT」で、弁当会社にパートで働いている主婦、渋谷の町に立つ娼婦、そして「ギンジ」。
彼らの中に存在している「絶望」の重さ黒さに、思わずひるんでしまう。
なぜこれほどまでに彼らは絶望するのか。
ことに「ギンジ」の失望が絶望に変わっていく過程は、今の社会が生み出したものだといっていい。
そして彼らは、絶望の中で、何かをつかむ。
溺れる者がつかむ葦なのだろうが、その葦は既に腐っていたりする。
それでも、彼らはそれをつかまえ、腐った葦を糧に生き抜く。
それが、たとえ「死体遺棄」だろうと「売春」だろうと、「記憶喪失」だろうと。
希望にもならない希望。
しかし、それがあることで人は生きていられる。
深い絶望の中にある人間に、まっさらな希望など提示すれば嘘物語になってしまう。
桐野作品には、その手の嘘がない。
だから、時々読み進めつらくてひるむこともあるのだけど。
今回の作品は、沖縄が舞台。
あの陽光と海が、少しは気慰めになるかと思いきや、沖縄が抱える現実を、新聞が声高に叫ばない現状の中から拾い出してみせる。
その辺りも、さすが、な作品です。
読みかえせって言われると辛いけどね(^^;)
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ジャンル : 本・雑誌

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やりましたね!

松井さんの受賞記事を見て、
「おおっ!珍獣さん、大当たり!」
と心の中で快哉を叫びました~♪
さすがですね・・・。
珍獣さんの目の確かさには驚嘆しました。

たいてい予想は外れるんですけどねー。
なんか、審査員好みの感じがしました。
筋立てといい、キャラクターといい、意外性といい。
もう一つの候補作「赤朽葉家の伝説」も面白かったんですけどね。
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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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