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空気感のある小説~~「私の男」~~

ご存じ、今年の直木賞受賞作、「私の男」。
これ、何とも言えない空気を持つ小説なんです。
直木賞選考委員の方々の「こんなテーマは好きじゃないけど、選んじゃった」「選ばざるを得なかった」というコメントに、今回は素直に頷いてしまいますわ。
なんたって、「近親相姦」の話ですからね。
ものすごく簡単に言ってしまうと。

主人公の腐野花(何ちゅー名前。この時点でもう、作品の空気がにじみ出てきます)は、誰もがうらやむような良家のお坊ちゃん(しかも、善良)との結婚を控えている。
花は、養父の腐野惇吾と二人暮らし。
小菅の、東京拘置所近くの古ぼけたアパートに住んでいる。
花は、9才の時、奥尻島の地震で家族を失い、当時25才だった、遠縁の惇吾に引き取られ、海上保安庁の巡視船に乗っている惇吾と共に、紋別で暮らし始めた。
しかし、花が中学生の時、とある事件が起こり、二人は逃げるように上京する。
そして、その事件は、また新たな事件を呼ぶ……

というようなストーリー。
いや、最初は読みにくいというか、何というか、「オイオイ、子供と養父の近親相姦の話って……それ、虐待じゃん?」という疑念と嫌悪感が浮かぶ。
いや、浮かばざるを得ないでしょう。
ところが、嫌悪しながら、次々とページをめくってしまい……
気がついたら、降りるべき駅を3駅も乗り過ごして読みふけってしまった。
これが、作者の桜庭ワールドに取り込まれるってことなんです。

桜庭さんの作品には空気がある。凄く特殊な。
まず、舞台となる土地の空気。
この作品では、青黒い海に覆い被されそうな紋別の町。
行間から、潮の匂いまで漂ってきそうな。
東京拘置所裏の、何とも荒涼とした雰囲気。
行ったことのない町だけど、今確かに自分がそこにいるように感じさせられる。
匂いや、風邪や、温度や湿度……を肌に感じるように。

筆力のある作家や、好きな作家には、誰でもその作家なりの「ワールド」があるけれど……
例えば宮部みゆきさんなら、作品全体から漂う情や、優しさ、
奥田英朗さんなら、皮肉さとユーモア、
のような。
桜庭さんの場合は、それとはまた違う何か。
正直言って、決して好きなタイプの作品ではないだけに、何故惹かれるのかがわからないけど、何だか……という感じか。
多分、直木賞選考委員の方々も、こんな感じを味わったではないかと推察するのです。

共通点があるなあ、と思うのは、作風は全然違うけど、
桐野夏生さん、かな。
桐野さんも、独特な空気感を持つ作品を書く人だから。
でも、桐野さんは、視点がしっかりしていて、何というか、「刺すような目線」の作品。
桜庭さんは、「どこを見ているかわからない不思議な目つき」の作風。
共通しているのは、「空気」だけかもしれない。
これまた作風は違うけど、カズオ・イシグロにも共通する空気感?かもしれない。

何にしろ、この手の作品につかまると、後を引く。
読後感が全然良くなかったり、
「この構成はどうなってるんだ?」という疑問は次々湧くものの、また次の作品が出たら読んでみようかなと思ってしまう。
ええ、とっぷり捕まってしまいましたわ。
桜庭一樹ワールドに。
好き嫌い、賛否両論、いろいろある作品だと思うけど、あの空気にとっつかまってみたいかたは、ぜひご一読を。

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テーマ : 本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

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病気のせいもあって、本当に本を読んでいない昨今、【イマドキのベストセラー作家】の作品に全く疎くなっております。DANCING WOLFさんのこのブログを読むと《現在の小説のトレンド》が分かるような気がして、とても嬉しいです。この本も、読んだら引き込まれていきそうだわぁ。元気になったら読んでみたくなりました。

めりいさん、いつもありがとうございます。
そう、この小説は元気になってから読んだ方がいいでしょう。
いい意味でも、毒気に当てられそうなところがありますから。
これからもせっせと読み続けますので、ご愛顧くださいませ。
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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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