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艱難汝を珠にす

昨年だったか、一昨年だったか、フィブリノゲンの使用による肝炎患者の戦いをニュースで見た時、原告の女性達が一様に凛々しく、気高く見え、それに比べて役人達の卑小さがつくづく情けなかった。
それも、原告への同情心だけとも思えない。
何も知らされずに肝炎患者にされてしまった被害者の方々は、そんな厄災にあわなければ、ごく普通の主婦であったり、OLであったりしたのだろう。
けれど、共に手を取り合ってきた人の死に立ち会い、自らの命の終わりを刻々意識しなければならない中で、命を賭して国という巨大組織に立ち向かわなければならなかった過酷な環境が、かの人たちを、まさに「珠」にしたのだと思う。

山口県光市で、母子殺人事件の被害者遺族となった本村洋さんも、過酷な運命の中で、否応なしに磨かれた「珠」なのだろう。
若くして結婚し、父となり、まだまだ新婚生活ただ中にあった、20才をいくつか出たばかりの青年にとって、事件はあまりにむごく、辛く、苦しいものだった。
他人の私達が聞いても、その内容はあまりに悲惨で、多くの人々が「死刑やむなし」というか、たとえ犯行時少年であったとしても、「積極的に死刑を適用すべし」と感じたのではないだろうか。
けれど、少年への死刑を求めた本村さんの戦いは常に「負け戦」で、怒りと悲しみと絶望に満ちたものだった。
絶望を乗り越え、ただひたすら愛する家族のために戦った本村さんは、事件当時の若々しい好青年ではなく、一種の風格を備えた人間となった。
本人はそんなことを望んだわけではないだろうが。
あまりに過酷な体験と戦いに、本当に「なぜ君は絶望と闘えたのか」と問いたくなる。
そして、その答えがこの本につづられている。
読み進むたびに、何度も涙を抑えることが出来なかった。
自分なら、到底ここまでは闘えない。
加害者を憎み、加害者の家族を恨み、日本の司法制度を呪詛して、絶望の中で自分の無力感にさいなまれるだけだろうと思う。
本村さんの戦いは、結果として、そんな人間を増やさないためのものにもなった。

しかし、それにしても……
加害者の少年、そして、荒唐無稽なストーリーを作り上げて彼を弁護した弁護団に対して、怒りを禁じ得ない。

感動とやるせなさと怒りと……複雑な感情を生み出す一冊。
読んで良かった。
「珠」になれるような人間ではないし、「珠」になれるような過酷な厄災もごめん被りたいけれど、せめても「人」として生きていけるようでありたいから。そう強く感じていたいから。


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