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私も悼んで欲しい~~悼む人~~

やっとPCの前に落ち着いて座ることが出来たので、いの一番に書きたかったこの本の紹介を。
天童荒太さんの新作です。
というより、直木賞を既に受賞された作品なので、とーっくに話題になった本ですが。

天童さんの作品は、ほとんど読んでいます。
(といっても、寡作な方なので、作品数自体そう多くはありません)
名前の通りと言うべきか、「荒ぶる魂」が感じさせられる作品が多くて、その筆力に驚嘆させられ、次々とページを繰りながら、心の中に流れ込んでくるのは、ある種の悲鳴や怒りで、読む側の心の中に沸き上がるのも、恐怖や畏怖、悲憤だったりして、正直好きなのに、怖いといった作家さんでした。
少なくとも私はそう感じていて、読んでしまうんだけど、また辛くなる……というジレンマに襲われつつ手に取っていたのでした。(手に取らざるを得ないのは、本読みの悲しい性なのか、天童さんの筆力なのか……)

でも、今回のこの「悼む人」は違う!
読み終えた後の、この静謐さと厳かさは一体なんなのでしょう。
心にしみいる作品です。つくづくと思ってしまいました。
天童荒太恐るべし!

物語は、とある青年を目撃した人の話から始まります。
自分の親友が殺された場所で、何かの仕草をしていた青年がいたと。
それこそが主人公の「悼む人」でした。
彼は、人が死んだ場所へ足を運び、その死を悼みます。死者がどんな人であろうと、どんな死に様をしようと全く変わりなく。
そう、殺人事件の被害者であろうと、加害者であろうと。
誰に頼まれたのでもなく、なんの宗教に属しているのでもない彼は、自分の貯金を食いつぶしながら、全国通津うらうらを旅し、人の死を悼んでいるのです。
公園で野宿し、粗末なものを食べ、周囲から偏見の目で見られて時には警察に保護されたりする、そんな過酷な旅は、ただ死者を悼むためだけのものでした。
ふとしたことから彼の行動を知ったエログロ専門と呼ばれる雑誌記者は、彼と出会い、その行動を馬鹿馬鹿しいと断じながら、彼のことが気になってたまりません。
その記者だけでなく、まるで惹きつけられるように、自ら夫を殺し刑務所から出てきたばかりの女も彼を追います。
彼の行動に、「死者を悼む」以外の理由を見つけたくて。
彼には故郷に家族がいます。
しかし、人の死を痛み続けている彼の家族にも死の影が差してきて……

人の死を題材にしているのだから、当然の事ながら随所に残酷な事件が記されたり、なんとも共感できない人物が登場します。
それでも、かつての作品のように、心をこじ開けられて、考えなければならないけれど目を背けたい現実を流し込まれる辛さは全く感じません。
ただ、ひたすら願うのです。
もしも自分が死んだら、私も彼に「悼んで」ほしいと。
もしも自分の愛する人が死んでしまったら、彼と共にその死を「悼みたい」と。

この人は誰にどんな風に愛されていたのか、愛していたのか、そしてどんな風に感謝されていたのか。
彼が死者を悼む時に、周囲の人に尋ねるのはこれだけです。
そして、その言葉を胸に入れた時、凶悪な殺人犯でも、生まれたばかりの赤ん坊でも、誰かに愛され、誰かを愛し、誰かに感謝されたことがあるのを知るのです。

つまるところ、人に生きてきた価値や意味があるとすれば、それだけなのかもしれないと思います。
偉業をなしとげたことでも、富を築いたことでも、人の賞賛を浴びたことでもなく。
ただ、人を愛し、愛され、感謝されて人生を送れれば、それが何より素晴らしい。
そして、それを思い浮かべながら「悼んで」もらえれば、まごうことなく「成仏」出来るような気がします。
分かっているようで、実は取り紛れていた人生の真実を、もう一度目の前に広げて見せてくれたこの作品に感謝。
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テーマ : オススメの本
ジャンル : 本・雑誌

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この【悼む人】、何かの書評でも読んで、すごく気になっていました。
アカデミー賞の【おくりびと】もそうかもしれませんが、いつの間にか《人間はいつかは必ず死ぬ》ということから目をそらせ続けたことによって世の中がなんとなく歪んできたことへの反省なのかもしれませんね。
平均寿命が延びたとはいえ、一人一人の寿命というのは誰のものとも比べられない。
いつその時がきても安祥としていける自分でありたい、と平均寿命の折り返しを越えためりいさんは思ったりします。v-421

確かに、「死」を感じる作品に惹きつけられるのは、若い頃より確実に死に近づいてきたからかもしれません。
若い頃は、自分の生が終わる時のことはおぼろげながら想像できても、その後のことまでは想像の外でした。けれど、人は死んでも「悼まれ」ながら、どこかで誰かや何かと続いている……そういうことも考えるようになりました。
そういうことを考えさせてくれる本や映画と出会えるのは幸せなことですね。
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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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