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失はれる物語は失われない

人間にとって最も崇高な精神は自己犠牲だ、と思ったことがある。
例えば、子供を救うために自らの命を差し出す人のように。
でも、一つ間違うと、自己犠牲は「国を守る」「義勇軍」のように、危うい方向へ進む旗印として祭り上げられかねない。
でも、そんな大仰なものではなく、淡々として美しい自己犠牲のお話がある。

私にとって、作者の乙一氏は、ずっと、「ホラーな人」のイメージで、故に近寄らなかったのだけれど、ネット上の知人が別作品をオススメしているのを知って、偶然にも手にとってみたのだ。
ホラー作品を読む前に、この物語と出会って良かった。
乙一作品とは幸せな出会いをしたことになる。
そう実感させてくれるくらい、この物語は、心の奥のある部分を、しーんとさせてくれる。
泣けるとか、そういう一言では片づけられない。
涙の前に、心がすーっと澄んでいくのを覚えたのだ。

事故で、右腕の感覚と、言葉にならない「考える」力だけが残された夫に、妻は、毎日やってきて、右腕に語りかける。
夫の右腕に、指で文字を書くことで。
やがてその指文字は、妻が以前生業にしていたピアノに取って代わる。
妻は、夫の右腕でピアノを弾くのだ。
やがて、夫は、妻の音のない演奏から何かを感じ取っていき・・
というようなストーリー。
全編を通して、描写の一つ一つが繊細で、美しい。
そしてラストの夫の決意に、私は深く頭を垂れる。
これこそが美しい、自己犠牲の物語だと。
タイトルは失はれる物語だけど、私の中ではきっと失われることのない物語になるだろう。

同録されている短編の数々も、それぞれに印象的なお話。
短編集として価値高し。オススメします。
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テーマ : 乙一
ジャンル : 本・雑誌

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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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