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宮部さんの新作

宮部みゆきさんの新作です。
前作「誰か」に続く主人公で、無差別連続毒殺事件という、「誰か」よりもハードな題材を扱ってます。

主人公の杉村三郎は、超巨大コンツェルン会長の娘と結婚し、義父の会社で社内誌を作っている心優しい夫。
誰もがうらやむような逆玉に乗ったものの、義父の会社で出世しようとか、財産の分け前を狙おうとかいう野心は全くなく、妻と娘をこよなく愛する良き家庭人で、社内でも「会長の婿」という立場に微妙な視線を感じつつ、威張るどころか身を低くして一生懸命仕事をしている。
そんな平凡?で穏やかな暮らしをしているはずなのに、なぜか彼の元には事件が舞い込んでくる。
弱っている人を見ると放っておけないお人好しな性格のせいかもしれないが。
無差別毒殺事件が起きる中、彼は社内誌を作る編集部の中で、仕事もできないのにヒステリックでやる気のないトラブルメーカーをアシスタントとして抱え込むことになる。
同じ頃、毒殺事件の被害者の遺族である女子高校生とも知り合い、トラブルメーカーが巻き起こす嵐のような騒ぎと、毒殺事件の謎に巻き込まれていく。
そして、まったく関わりの無かったはずの二つの事件は微妙に彼の生活の中でシンクロしていき、やがて暴風雨となって、彼の生活を脅かす・・
というストーリー。
そこには、シックハウス症候群よりたちの悪い、「土壌汚染」という社会問題も織り込まれ、「へぇぇ、こんなことがあるんだ」と、目を開かされる。
このあたり、宮部さんらしい。
でもやっぱり宮部ワールドらしさを感じるのは、直接本筋とは関わりのないと思われる登場人物のキャラクターであったり、彼らが主人公に向ける視線であったり、逆に主人公が彼らに寄せる思いであったり、映像化されるときに切り捨てられてしまう枝葉の部分なのだ。
例えば、編集部にいる定年間際の副編集長や、ちょっと見ると毒舌家の女性編集長、はきはきして感じのいいアルバイトの女子大生、お調子者で如才ない若手社員・・彼らの言動は直接には事件を解く鍵にはならないけれど、彼らの考え方や生き方を映したせりふやちょっとした振る舞いがあるから、主人公の立ち位置が鮮明化され、作者の思うところが端々に現れたりする。
確かに事件が起これば、視線は犯人や謎とき役に向かうのだけれど、そこだけを追った小説は、味気ない。
事件の意外性やトリックばかりを追いかけていくことになるからだ。
でも、事件の起こる世の中にはいろんな人が生きていて、そのいろんな人たちが、事件が起きる「社会」や「世間」を構成しているのだ。
そこまでひっくるめて事件を見ることができるから、宮部さんの作品は無機質にならず、どこか人肌のぬくもりを感じさせる。
それが宮部ワールド、と私は思っていて、常日頃映像化される作品を見るたびに、「ああ、宮部ワールドをずたずたにしてる」と憤ることになったりするのだ。
もちろん上映時間を考えると、私の望んでる宮部ワールドをそのまま作り出すのは難しいんだろうけどね。

しかし、やっぱり、けど、でも・・
どんなに人肌を感じさせても、舞台が現代ってのはなんか殺伐。
悲しい結末に泣きながら、それでも読後希望を感じられるのは時代小説だわ。
もう一回「孤宿の人」を読んでみようかしらん。
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ジャンル : 本・雑誌

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