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グロテスク

初対面からうち解けられる人と、そうでない人がいるように、
取っつきやすい作家と、そうでない作家がいる。
それはもちろん、人それぞれで、私の場合は、取っつきやすかったのが宮部みゆきさんだった。
「模倣犯」のように、かなり辛い話でも。
逆に、苦手意識が先立ったのが、桐野夏生さんだ。
かなりの力量と感じ入りながら、それが故にか、「OUT」は、ついに読了できなかった。
ページをめくらせる筆力はさすがなのだけど、主人公たちの醸し出す、あまりに濃密な息苦しい空気に取り巻かれているような気がして。
「顔にふりかかる雨」も、「柔らかな頬」も、読んでは見たけど、辛かった。
じゃ、読まなきゃいいのに。
はい、ごもっとも。
でも、読みたくさせるんだよね。
本読みの好奇心をくすぐる作家なのだ。
というわけで、新刊発売当時、「読みたい」と思いつつ、「いや、きっと辛くて読了できない」と思い悩んで、手を付けられなかった「グロテスク」が文庫で出たので、ついに勇気を奮い起こして読んでみた。


主人公は、スイス人の父と日本人の母の間に生まれたハーフ。
だけど、顔立ちはほとんど母に似ていて地味である。
逆に、妹の「ユリコ」は、まがまがしいほどに完璧に美しい少女だった。
主人公は、ユリコの美しさを憎み、姉妹としての情を通わせようとはしない。
人の心を狂わせるユリコは怪物であり、美しいだけで、頭の中は空っぽの女、と断じていた。
主人公は、必死に猛勉強して入った私立の女子校で、二人の少女に出会う。
かたや、学年トップの成績を取り続けるミツル。
もう一方は、「努力すれば何でもできる」という信念に凝り固まっている佐藤和恵。
小学校から内部進学で進んでくる、裕福な女生徒たちの中で、ミツルも、和恵も、主人公も、異質な存在として浮いていた。
ミツルは頭脳を、和恵は努力を、主人公は悪意を心の軸に、女子校生活を生き抜こうとするのだが、そこに、ユリコが入学してきてしまい、彼女たちの関係はねじれにねじれていく。
そして、年月は流れ、美貌が衰えたユリコは、かつて予感していたように、立ちんぼの娼婦として殺され、ミツルは夫と共にカルト宗教に入信して大きな事件を起こし、そして和恵もユリコの後を追うように娼婦として殺される。
残された主人公は・・

というようなストーリー。
いつものように、どんどん次のページが読みたくなる。
そして、読み進むうちに、登場人物の毒気に当てられる。
何しろ、東電OL殺人事件とオウムという巨大なモチーフが一つの作品に同時に登場するのだ。
加えて言えば、「蛇頭」まで。
しかし、それらは「社会の中の事件」としてではなく、それぞれの女たちの濃密な憎しみ、自己認識、錯覚、等などの中で生まれ出て、そしてその結末として消化される。
その分、女たちの抱えているものは、触れるだけでネバネバと、こちらにまとわりついてくるように感じる。
例えば、妹の美しさを呪詛する主人公は、常に「ユリコの姉」としてしか認識されておらず、名前すら与えられていない。
誰も彼女を名前で呼ぶものがいないのだ。
その分、彼女の妹に対する憎悪が倍加して感じられる。
妹とは逆に、男を好きになったことも愛したこともないという彼女は、果てしのない自己愛の中でしか生きられない。
努力すれば何でもできる、努力したから一流女子校、大学を経て一流企業社員に昇りつめたと自負する和恵は、企業社会の中で、目に見える努力の成果が現れないことにいらだつ。
娼婦としてお金を稼ぐことは、彼女にとって目に見えた成果だった。
夫と共に大きな社会事件を引き起こしたミツルは、それによって傷ついた他人に対してほとんどまなざしを向けようとはしない。
彼女は被害者の一人として存在しているかのように振る舞う。
恐ろしいほど身勝手で、自己中心的な女たち。
それでも、彼女たちを軽蔑したり、あざけったりできないのはなぜだろう?
愛すべきところなど一点もなさそうな女たちなのに。
けれど、彼女たちの何かが、自分の中に存在していないか?と問うと、ひやりとするものを感じる。
渋谷の薄暗い街角で客を待って立ちつくしているのは、コンビニでおでんを買って、おでんの汁をすすりながら歩いているのは、和恵ではなく、この自分ではないかと。
「あり得ない」と断じながら、和恵と自分を重ねてみる人は多いかもしれない。
すくなくとも、「東電OL殺人事件」が世に出たとき、「私も彼女のようになるかもしれない」「彼女に共感する」という女性からの手紙が、筆者の元に数多く寄せられたという。
両作品とも、読み進めるのは辛い、痛い。
読了した後、溜息が出る。
多分、二度と読み返そうとは思わないだろう。
それでも、しっかり脳裏に焼き付いてしまった作品、といえるかもしれない。
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テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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