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奧さまはつらいよ

「人の体って、わかりやすくできている(中略)指先、毛先、かかとといった体の末端は、きっと何かのセンサーなのだろう。乾いたり、ごわついたり、その人の心の状態をあっさりと伝えてしまう」
うんうん、そうですよね。
ここのところ、手先の荒れが気になる私ゆえ、納得。

こんな風に考えている主人公は、ネイリストで、自分の店を持っている。
でも、本人いわく「デブでブスで、雑誌に出てくるネイリストとは大違い」。
そんな彼女の店を訪れるのは、ネイルなんかしたことがないという50代以上のお客がほとんど。
彼女たちに、今までしたことがない爪のおしゃれを提案するのが楽しいという主人公は、心優しくて、働くことに誇りを持つ素敵な女性だ。
この人の、何かを諦めた、でも人生を諦めたのではない淡々とした生き方が潔くて、愛しい。

夏石鈴子さんのこの短編集↓には、そんな女性(主に奧さま)が多数登場する。

子供のいる人、いない人、働いている人、いない人……それぞれ違うけれど、立場は同じ。
みんな「奧さま」。
この本に登場する「奧さま」には、不倫している人も、韓流ドラマにはまりこむ人も、三食昼寝つきでお気楽に暮らしている人もいない。
おおよそ、日本のマスコミや男達が「気楽だよな」とひとくくりにする「主婦」とは縁遠い。
彼女たちは、ごく普通に家事をし、子供の面倒を見、時にはパートに出、PTAの会合に出席する。
おしなべて「普通の奧さま」。
なんの苦労もなさそうでいて、その心の中にはいろんなものが渦巻いている。
どうしてこんな事も出来ないのか、と我が子に絶望する母。
無神経な姑の言動に怒りをため込む嫁。
いかにもごくありきたりな状況だけれど、彼女たちの心のつぶやきに、ついつい頷いてしまう。
みんな、頑張って生きてるのよ。そうだよね、と。

作者の夏石さんは、後書きの中で、だいたいの人は苦しみ悲しみがあっても、それを外には見せない、とりあえず何かあっても、外からは普通に見せるのが人間の才能だと言っている。
だから、この物語の主人公達は、みんな「普通」なのだ。
だけど、物語の中で、彼女たちは「逆襲」する。
そうしないと、誰も主婦の言うことを聞いてくれないから。
作者にとって主婦とは「雄々しい人」で、「たった一人で自分の全てを家族に差し出している善意の人」だそうだ。
日頃は自分が「主婦」であることをあまり意識したことがない私も、この言葉に「そうだよねぇ」と、とーっても共感する。
夏石さんの、この視点が物語を貫いているから、主人公達は皆愛しい存在で、「がんばれ同士よ」と、肩など叩きたくなるのだ。

結婚してなくても、主婦でなくても、子供がいなくても、この主人公達をきっと好きになるはず。
私はしばらくぶりに、ほっこりした爽快感を味わった。
この作品に感謝しつつ、女性の皆様にお勧めします。

テーマ : オススメの本
ジャンル : 本・雑誌

働くのが好きになる本

「ミゾウユウ」ならぬ、「未曾有」の不景気。
仕事があればいい方、仕事が嫌だ、嫌いだ、辞めたい……なんて甘っちょろいこと言えるご時世じゃありません。
働ければいい方、正社員になれれば超幸運
それは分かってるけど、でも、やっぱり「仕事に行くのが楽しくて仕方がない」なんて人、少ないですよね。
日曜日の夜になると暗い気持ちになる「サザエさん症候群」も発症するし、
月曜日はうんざりのブルーマンデー。
「こんな仕事辞めてやる!」と、タンカ切れない分、ストレスが溜まるってもんです。
そんな「働く人」にお勧めしたいのが、山本幸久さんの小説。
デビュー作の「笑う招き猫」以来、その軽妙な筆致がお気に入りで追っかけしている作家ですが、この人、「会社」で「働く人」を描くのが抜群に上手い。
仕事なんかしたくないけど、職場に行きたくないけど、でも、ひょんな事から、怖いと思っていた上司の人情に触れたり、意外なやりがいを見つけたりして、全然意識してなかった仕事や職場への愛情や、仕事の楽しさに気づく……その経緯やさじ加減がとっても良いのです。

↑新作は、バスガイドのお話。
同期の友人に、風呂場で脇腹をつままれ、「メタボバスガイド」と呼ばれる主人公。
自分がバスガイドに向いているのか、バスガイドという仕事そのものが好きなのか、わからない彼女が、新人研修の指導員にされ、彼女たちに振り回されたり、同期や上司の意外な面に触れたりして、やがて立派な?バスガイドになっていくというお話。

↑こちらは、店舗デザインの会社に勤める三人のオヤジ(っていうにはちょっと若いけど、酔っぱらうと初対面の女性の胸を揉んでしまう営業マン、昔風イケメンなのに風俗好きで寡黙なメンテナンス担当者、上司にどんなに反対されようと自分のデザインにこだわり、自腹で借金してまで機材を買ってしまったりする設計者……となると、オヤジと呼ばれても仕方ないでしょう)を中心に、やる気のない新人や、いけ好かない上司、頼りない社長、最強のお局など、同じ会社の個性溢れる面々が活躍するお話。
両作品に、かつての「凸凹デイズ」の登場人物がちらっと現れるのも楽しい。
どれも、明日会社に行くのが嫌だなあ……という人にオススメです。

テーマ : オススメの本
ジャンル : 本・雑誌

切ない恋物語なら

ケータイ小説、私は読まない。
否定はしないけど。
「本なんか読まない」って言う人が多いよりかはいいと思うので。
書店に平積みされている、いかにもなケータイ小説は圧倒的に「恋バナ」系が多いみたい。
帯の紹介文を見ただけで、「トンデモ」系の恋愛小説みたいに思えるのだけど、ま、そういうのが好きな人もいるのねぇ。
好きな人がいるのに、レイプされたり、病気になったり、事故にあったり……というような波瀾万丈?(^^;)系。
読むだけで疲れそうだなあ。
本を開くのが好きな、古いタイプの本読みとしては、こう、何というか、ちょっと慎ましやかで、きりきりする切なさじゃなくて、おお、うんうん、懐かしいなあ、この感覚、こういうの昔感じてたよなあ……っていうラブストーリーはないもんかと思っていたら、ありました。こちら↓

凄く美少女なのに、周囲から浮かないように不細工に装っている(頬に綿を仕込んだりして。大変だね、美少女も)主人公が、ひょんな事から美人である自分を見られてしまい、そのために労した小細工で、自分じゃない美少女を演じなくてはならなくなって……
という、昔懐かしの少女マンガを彷彿とさせるストーリー。
でも、ありがちな甘ったるい小説に堕ちないところが、この作者の力量と見た。
主人公の友人の描写とかが、結構笑えて、オチではジーンとさせる。
うまいなあ。
大人を主人公にした短編小説は「ヒット」が多いのだけど、若者主人公のラブストーリーはどうよ?と思っていたら、これは「アタリ」。
多分、この作家さん、このあと来ますよ。
注目しておいて損はない、です。

テーマ : オススメの本
ジャンル : 本・雑誌

艱難汝を珠にす

昨年だったか、一昨年だったか、フィブリノゲンの使用による肝炎患者の戦いをニュースで見た時、原告の女性達が一様に凛々しく、気高く見え、それに比べて役人達の卑小さがつくづく情けなかった。
それも、原告への同情心だけとも思えない。
何も知らされずに肝炎患者にされてしまった被害者の方々は、そんな厄災にあわなければ、ごく普通の主婦であったり、OLであったりしたのだろう。
けれど、共に手を取り合ってきた人の死に立ち会い、自らの命の終わりを刻々意識しなければならない中で、命を賭して国という巨大組織に立ち向かわなければならなかった過酷な環境が、かの人たちを、まさに「珠」にしたのだと思う。

山口県光市で、母子殺人事件の被害者遺族となった本村洋さんも、過酷な運命の中で、否応なしに磨かれた「珠」なのだろう。
若くして結婚し、父となり、まだまだ新婚生活ただ中にあった、20才をいくつか出たばかりの青年にとって、事件はあまりにむごく、辛く、苦しいものだった。
他人の私達が聞いても、その内容はあまりに悲惨で、多くの人々が「死刑やむなし」というか、たとえ犯行時少年であったとしても、「積極的に死刑を適用すべし」と感じたのではないだろうか。
けれど、少年への死刑を求めた本村さんの戦いは常に「負け戦」で、怒りと悲しみと絶望に満ちたものだった。
絶望を乗り越え、ただひたすら愛する家族のために戦った本村さんは、事件当時の若々しい好青年ではなく、一種の風格を備えた人間となった。
本人はそんなことを望んだわけではないだろうが。
あまりに過酷な体験と戦いに、本当に「なぜ君は絶望と闘えたのか」と問いたくなる。
そして、その答えがこの本につづられている。
読み進むたびに、何度も涙を抑えることが出来なかった。
自分なら、到底ここまでは闘えない。
加害者を憎み、加害者の家族を恨み、日本の司法制度を呪詛して、絶望の中で自分の無力感にさいなまれるだけだろうと思う。
本村さんの戦いは、結果として、そんな人間を増やさないためのものにもなった。

しかし、それにしても……
加害者の少年、そして、荒唐無稽なストーリーを作り上げて彼を弁護した弁護団に対して、怒りを禁じ得ない。

感動とやるせなさと怒りと……複雑な感情を生み出す一冊。
読んで良かった。
「珠」になれるような人間ではないし、「珠」になれるような過酷な厄災もごめん被りたいけれど、せめても「人」として生きていけるようでありたいから。そう強く感じていたいから。


テーマ : 本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

2008年後半の本

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
いつもいつも不定期で、思いだしたようにしか書けないブログですが、「面白そうだから読んでみたよ」という声に背中を押されて、これからもボチボチと続けていきたいと思います。
どうぞ懲りずにおつきあいくださいませ。

では、2008年、7月以降に読んだ本です。

英語は逆から学べ
会社を辞めて田舎へGo!
忍びのくに
おそめ
モンスターマザー
仏果を得ず
生活保護VSワーキングプア
埋もれる
反貧困
俺たち花のバブル組
幕末不戦派軍記
図解あなたも今まで10倍早く本が読める
カレーライフ
サクリファイス
毎日かあさん4
禁断のパンダ
ミラノ朝のバールで
のぼうの城
年下の男の子
空飛ぶタイヤ
ニシノユキヒコの恋と冒険
畏れおののいて
一朝の夢
めぐり会い
東京島
おそろし
源氏物語の時代
プラチナタウン
平成大家族
愛の幻滅
風をください
赤目四十八滝心中未遂
LOVE or LIKE
体においしい野菜の便利帳
夢のように日は過ぎて
枕女優
主婦と恋愛
フードバンクという挑戦
21
ワーキングプア
再会の日々
ふじこさん
俺たちバブル入行組
性犯罪にあうということ
大奥章伝
虹を架けた女たち
ゾルゲ事件
マリッジインポッシブル
セ・シ・ボン
お蝶夫人
妻たち
白蓮れんれん
エイジハラスメント
スリーピングドール
華族夫人の忘れもの(新・御宿かわせみ)
赤まんま
ドキュメント死刑囚
RURIKO
戸村飯店青春百連発
書店はタイムマシーン
みきわめ検定
家のロマンス
誘拐
会社デイズ
田村はまだか
なぜ君は絶望と闘えたのか

書き漏らしもあるけど、まあこんな感じかな。
しかし、脈絡がないなあ。「乱読」って感じです。
でも、その都度自分が何に興味を持っていたのかが良く分かって、感慨深いです。
例えば、「生きさせろ」からずっと気になっていた、ワーキングプアや貧困問題。
火の粉が降りかかってきた経済危機とはいうものの、火種はやはりあったのです。
一生懸命働いている人が、衣食住の最低限をまかなえない暮らしに陥るのは、あまりにおかしい。
一応、如実に感じていたことを追っかけていたんだなと思います。
本読みとして最低限のアンテナだと思いますが。

その一方で、やっぱり「じんとくる話」「ホッとする作品」「思わず笑ってしまう小説」との出会いも欠かせませんよね。
2009年も、本がたくさんの幸せを与えてくれますように。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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ブラジリアンダンスとブラジル音楽、本と旅をこよなく愛する「恥かき」ならぬ「物かき」です(一応(^^;))。独断と偏見と偏った嗜好でつづるブログでございますが、どうぞお気軽に遊びに来てくださいませ。

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